〈明るい方へ/明るい方へ〉。生きとし生けるものは明るさを求め、近づこうとするものだ。植物も、虫も、人間も-。金子みすゞは希望を込めて童謡詩をつづった。
2015年が明るい1年になることを願ってやまない。だが、企業や個人の収入格差、東京圏と地方の格差、世代間格差の拡大が暗い影を落としていると言わざるを得ない。
安倍晋三首相は経済政策「アベノミクス」で「富める者が富めば、貧しい者にも富が滴り落ちる」というトリクルダウン理論を唱えた。
しかし、優遇された一部大企業の「勝ち組」は恩恵を受けたものの、富の配分は広がりや平等さを欠いているのが実態である。
政府がこのほど打ち出した経済対策や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、アベノミクスの手詰まり感と格差拡大の裏返しでもある。
経済対策は消費増税や円安による物価高に苦しむ中低所得者や中小企業に配慮し、消費喚起策や地方支援策を並べた。とはいえ事業には焼き直しが目立ち、新味を欠く。ばらまき批判も免れない。
人口減対策の総合戦略は、2020年までの5年間で地方に30万人分の若者の雇用を生み出す目標を掲げた。20年時点で東京圏から地方への転出者を13年より4万人増やすことも明記している。
雇用創出は不可欠だが、それだけで若者が地方へ向かい、東京一極集中に歯止めをかけられるかには疑問符が付く。その地で働きたい、暮らしたいと思わせるだけの魅力づくりが自治体に求められる。
若者には地方で生きる意味を熟考してもらいたい。イソップ寓話(ぐうわ)「田舎のネズミと町のネズミ」にあるように、東京圏とは質の異なる、地方での暮らしから得られる豊かさや満足を実感できることが肝要だ。
先の衆院選で安倍首相は「この道しかない」と繰り返し、与党は圧勝した。国民は、もはや政権に対して無力なのだろうか。否である。
まずアベノミクスであおられた期待感の呪縛から抜け出すことが先決だ。成熟した日本では右肩上がりの経済成長は望めない。限られた富を大企業や富裕層寄りに再配分し続ければ、格差はさらに拡大する。
ことしは未(ひつじ)年。国民は従順にリーダーの後をついて歩くヒツジではない。格差社会には「ノー」を突きつける気構えを持ちたい。
【神奈川新聞】