地震による液状化現象や地盤防災などを研究する関東学院大の規矩(きく)大義(ひろよし)学長が横浜市南区で「地盤災害から都市を守る」をテーマに講演し、「(被害を防ぐための)対策はコストではなく、バリューだ」と発想の転換を説いた。
規矩学長は同大に設置された「防災・減災・復興学研究所」の所長も務め、研究者が専門分野を超えて新たな備えや対策のアイデアを生み出す試みの旗を振っている。
講演では、横浜のような都市部は谷沿いの開発や沿岸部の埋め立てといった人工的な改変で確保された住宅地が多いと説明。そうした場所は「自然の力で造られてきた土地より弱く、傾斜地は崩落、低地では液状化が起きやすい」と指摘した。
特に崖崩れについて「地震以外の要因でも起きる。大雨が降れば、いつ崩れてもおかしくない」と述べ、「そこに住んでいること自体がリスクだ」と訴えた。土砂災害の中でも危険性が高いのは、上流から巨石が転がってくる土石流だとして「ぶつかったら助からない。逃げる勇気を持ち、水平に避難を」と命を守るためのポイントを挙げた。
一戸建て住宅が傾くなどの被害が出る液状化に関し「すぐに命に関わる災害ではない」としつつ、「命を守る対策と財産を守る対策は違う」と強調。東日本大震災で広範囲に液状化被害が出た千葉県浦安市のその後の状況から、事後的な地盤改良には難しさがあることを伝えた。その上で「リスクマップを作るなどして住民が判断できる材料を示す」とともに、損害を受けた後の復旧費用より低コストな事前の対策工法を普及させる必要があるとした。
講演は関東学院中学校高等学校の創立100周年を記念し、4月27日に行われた。