始動2日前に中沢の引退が発表された今季。クラブの精神的支柱を失った不安を払(ふっ)拭(しょく)したのが、開幕スタメンに名を連ねたブラジル人3選手だ。最終ラインのチアゴマルチンスが穴を埋め、エジガルジュニオは開幕2戦連続ゴ-ル。出色だったのが、仲川とともに得点王に輝いたマルコスジュニオ-ルだ。
海外初挑戦ながら「温かく迎えてもらったので1カ月くらいで溶け込めた」。トップ下の位置から持ち前の機動力を生かして攻撃を自在に操り、脚がつるまでピッチを駆け回った。
年代別の代表歴もある26歳の逸材を、マリノスは昨オフに移籍金なしで手に入れている。「半年くらい前にはマ-クしていたかな」と明かすのは編成トップの小倉勉。補強成功の陰には、資本提携するシティ-・フットボ-ル・グル-プ(CFG)の存在があった。
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強豪のマンチェスタ-・シティ-(マンC)を傘下に収めるCFGは、世界各国に約60人のスカウトを置く。その情報量は「日本に10しかないものが、彼らには100とか1000のサンプルがある」(小倉)というほど膨大だ。
CFGが2014年にマリノスの少数株主となった当初は、外資企業に乗っ取られるとの懸念もあった。年に数回、グル-プ内の関係者が集まる会議などで連携を密にし、最近はCFG側からポステコグル-の攻撃サッカ-に合いそうな選手を提案されることも多い。
「鹿島やガンバの名前は聞いていたが、マリノスは知らなかった」と話すチアゴは、前所属クラブで出場機会を失っていた選手。能力や年俸、性格はもちろん、置かれた状況をタイムリ-に把握して接触を図った。
Jリ-グは今季、外国人選手登録の上限を撤廃。出場枠も実質1増の5人とした。神戸が元スペイン代表のビジャを獲得し、川崎はロンドン五輪得点王のレアンドロダミアンを補強。移籍市場が活況を呈する中、情報力で先行したマリノスは「名より実」を取った。
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