中沢の思いつなぐ 結果残して恩返しを 「象徴」なき始動
横浜F・マリノス | 神奈川新聞 | 2019年1月11日(金) 02:35
J1横浜Mは10日、横浜市港北区の新横浜公園球技場で始動した。8日にクラブの大黒柱、中沢の現役引退が発表されたばかり。リーグ制覇と6季ぶりのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得に向け、一層の団結力が求められるシーズンを迎える。
中沢とともに最終ラインでプレーした18年目の栗原は「悲しいし残念。マリノスが失点の少ないクラブになれたのも佑二さん(中沢)のおかげ」と話し、育成組織出身の24歳喜田は「クラブにとって大きな1年。佑二さんから受け取った思いをつなぐことが自分の責任」と気を引き締めた。
初日のトレーニングはフィジカル強化を中心に約1時間半。浦和から加入した李や川崎から期限付き移籍の三好ら新戦力もフルメニューをこなした。18日から10日間の日程で沖縄・石垣島1次キャンプに入る。
当たり前が当たり前でなくなったとき、人は大きな喪失感に襲われる。いつもグラウンドにあった「マリノスの象徴」の姿が、始動日にない。
栗原は昨オフの納会で入団後初めて中沢と席が隣り合い、引退をほのめかされたという。それでもどこか「絶対に今年もやるだろうな」と高をくくっていた。「背中で示してくれた人。言葉で言い表せない存在」。うつむきながら、言葉を絞り出した。
堅守のマリノスは、中沢なしに語れない。失点を重ねようとも諦めぬ姿勢を栗原はその目に焼き付け「それが無駄な失点が少ない理由。簡単そうに見えて実はすごく難しい」。飯倉も「井原さんやマツさん(松田)から脈々と受け継がれたマリノスのディフェンスのDNAを体現した人」とその存在感を口にした。
栗原は納会の席で「マリノスのあるべき姿」を熱く語られたという。詳細こそ明かさなかったが常にクラブを思う人は多くのものを残した。
「若手いじりがなくなるのはさみしいな」。飯倉が言うように若手とのコミュニケーションを絶やさなかった。“標的”の一人だった喜田は「年齢や実績にかかわらず、かわいがってもらえた。僕は相当な幸せ者」。プロとしての心構えや練習に取り組む姿勢…。背中で示された一瞬が「宝物」だという。
中沢の決断は世代交代の波を生むか。ともに30代の栗原、飯倉は20代の台頭のサポートに回ることを宣言。「佑二さんの思いを今後のマリノスにつなげる」と意気込む喜田は12位に終わった昨季を振り返り、こう誓った。
「去年苦しんでしゃがんだ分、今年は大きなジャンプができればいい。結果を残すことが恩返しになる。次に佑二さんに会ったとき、チームとしても個人としても『成長したな』と言ってもらいたいんです」