リーグ3連覇を逃した川崎と、相次ぐ騒動に揺れながらJ1残留を果たした湘南。両クラブの戦いぶりを検証する。
8月24日、14位の清水に2-2で引き分け、首位FC東京と勝ち点差8まで開いた試合後だった。クラブに漂う重苦しい雰囲気を察した川崎の取締役強化本部長、庄子春男(62)はイレブンに語り掛けた。
昨季はリーグ最多57得点、最少27失点で2連覇を飾った。賞金など約22億円の資金を蓄え、史上2クラブ目のリーグ3連覇、ACLを含めたタイトル4冠に照準を合わせて満を持して臨んだ今季。ロンドン五輪得点王の看板を引っ提げたレアンドロダミアン、ジェジエウ、マギーニョに山村、馬渡和らを補強して地盤を固めたつもりだったが、描いた「足し算」を導けなかった。
J1ではクラブ史上最多タイの12分け。「勝てる試合で勝ちきれない」「今まで奪えていた2、3点目が取れていない」。ドローゲームの後、監督の鬼木達が嘆く光景は日常となっていた。
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「僚太(大島)がいないと前と後ろの距離感が合わない」
FW陣とMF、DFが互いに実感した「ずれ」が、大島の離脱が長引くにつれて選手たちの口から漏れ始めた。昨季J1全選手で最多となる2536本のパスを放った心臓部がチームを離れた時間は、計4カ月半にも及んでいた。