5日にさいたま市の浦和駒場スタジアムで行われた全国高校サッカー選手権準々決勝で、日大藤沢高が創部初のベスト4入りした。「高校生が憧れるこの舞台で、4強まで行けるなんて夢みたい」。1976年からサッカー部の顧問を務める野田徑部長(63)は優しいまなざしを送った。
歴史を切り開いた笛の音を聞くと、喜びが込み上げてきた。教え子とともにかみしめたいが、浮かれすぎないように選手を抑えるのもまた仕事。「まだ優勝まで二つあるからな。万歳するのは早いぞ」。39年間、いつも陰で支えてきた。
埼玉・浦和西高を卒業後、横浜国大に進んだ。75年から日大藤沢高の教員になり、翌年からサッカー部に携わった。監督として指揮を振るった時期もあったが、多くの時間はサポートに徹してきた。
大会への書類提出や父母会、OB会との連絡に加えて、食事の手配など裏方業務をすべて引き受けている。「監督が心配することがないようにね」。まさに縁の下の力持ちだ。
今大会では入退場に必要なカードの着用を怠った選手に雷を落とすなど、グラウンド外の行動にも目を光らせる。「マナーや礼儀をしっかりやらないと。まだ子ども」と野田部長。吉野敬主将(18)は「みんなが気が付かないところを見てくれている。お父さんのような存在」と感謝する。
来春には定年だ。日本一に立つチャンスは今大会を含めてあと2回だが、野田部長は笑った。
「本当はベスト8ぐらいで終わるかなあと思っていた。監督や若いスタッフ、コーチ、やんちゃだけど素直な選手たちのおかげでここまで来られた。私は何もしていない。ただ見ていただけ」。快進撃を続けるイレブンを温かい目で見守っている。
【神奈川新聞】