サッカーの第93回全国高校選手権県2次予選最終日は8日、ニッパツ三ツ沢球技場で決勝を行い、日大藤沢が厚木北を1-0で破って7年ぶり4度目の優勝を果たし、全国選手権大会の出場を決めた。
日大藤沢は前半29分、CKからDF小野寺健也(2年)が3試合連続となるゴールで先制。後半も主将のDF吉野敬(3年)を中心に厚木北を無得点に封じた。
本大会の組み合わせ抽選会は17日に行われ、12月30日の開幕から来年1月12日の決勝(埼玉スタジアム)まで熱戦が展開される。
◆点取り屋 DF小野寺
「全国で力試したい」
ヒーローはまたも背番号3だった。
前半29分、日大藤沢の左CK。この好機にDF小野寺は自分を信じ、ペナルティーエリア中央へ飛び込んだ。「絶対に決めてやる」。相手と競り合いながら、鮮やかなヘディングシュートをゴール右にたたき込んだ。
準決勝でハットトリックを達成し、この日も決勝の先制点を決めた2年生は「自分のヘディングでチームを救ってやろうと思っていた」と確信していたように言った。
決して大言ではない。今大会6ゴールで得点王に輝いたが、いずれもセットプレーから頭で相手ゴールを貫いている。
「ジャンプ力は全然(ない)」と佐藤監督は笑うが、的確なポジション取りと上半身の巧みな身のこなしは「1本でも(息が)合わないとやめる」(佐藤監督)という緊張感の高いトレーニングで磨いてきた。
本職の守備でも4試合ぶりの無失点に貢献したセンターバック。「全国で自分のヘディングが通用するか確かめたい」。冬の選手権で頭一つ抜きんでる日も近い。
◆全員で走り 1点守る
桃色の応援席が歓喜に揺れた。「一戦一戦、チームが一つになって戦ってきた結果。選手に感謝したい」と佐藤輝勝監督(35)。日大藤沢は全員がチームのために走り、1点を守り切った。
前半29分に得意のセットプレーから先制点を奪うと、そこからは「自分たちのペース」(MF西尾)だった。長身FWの前田にボールを集め、FW中村らが攻撃に絡んで主導権を握り続けた。
終盤は厚木北の波状攻撃に遭うが、今大会初のピッチに立った主将のDF吉野が、2年生GK鈴木が体を投げ出し、一線を割らせない。中村は「きついときに走り切れたのが強さ」と誇った。
この日は日大への内部進学のための統一テストがあった。3年生は試験を辞退してでも応援に駆け付けたいと直訴していたという。そんな思いを受け取った佐藤監督は「それぐらいの思いを持つ子がいて、おまえたちはお土産を持ち帰らないのか」とげきを飛ばした。「ここで負けるわけにはいかなかった」と吉野。チームは一つだった。
4連覇を狙う桐光学園など強豪を破り、上り詰めた神奈川の頂点。指揮官は「個性派だらけだけど、一体感を生み出せれば全国でも勝てるというのを感じた」と言い、キャプテンは「全国優勝が目標。ここは通過点にすぎない」と力強い。激戦を乗り越えて強くなったチームが7年ぶりに全国に乗り込む。
◆互角以上の戦い
楽しさと悔しさ
厚木北
「どっちに転んでもおかしくなかった」。厚木北の中村元彦監督(43)の言葉は負け惜しみには聞こえない。無得点での惜敗にも、攻撃的なサッカーで互角以上の戦いを演じた。
前半29分に警戒していたセットプレーから先制点を許したが、短いパス交換にサイド攻撃を織り交ぜ、相手ゴールを脅かし続けた。後半7分にはMF宮入の縦パスにMF森が抜け出し、中央にクロス。最後はFW曾我が押し込んだ。微妙な判定のオフサイドで得点にはならなかったが、惜しいシーンが何度もあった。
ベストゲームを演じたからこそ表情は悔しさにゆがむ。「決定機を決められなかった」と曾我。MF芳賀は「ラストの正確さが足りなかった」と1点の重みをあらためてかみしめた。
攻撃よりも守備意識を高め、今大会の躍進につなげてきたが、この日は「もう一回、自分たちがやってきたサッカーにこだわろう」(主将の久保田)と原点に回帰。楽しさもまた存分に体現した。
ただ、初優勝の夢はかなわなかった。「大事なのは、ここから再び積み上げていくこと」と中村監督。3年の曾我は「後輩には歴史を塗り替えてほしい」と言う。公立の星は再び、輝く。
【神奈川新聞】