若きセーラーにとってリオの風は優しくなかった。山手学院高出身でリオデジャネイロ五輪セーリング女子レーザーラジアル級に出場した土居愛実選手(22)=慶大=は20位でレースを終えた。それでも、2020年東京五輪の競技会場は地元藤沢市江の島。幼き頃、手ほどきをした人たちは次回こそ主役に躍り出ることを願ってやまない。
上位10艇が進む最終レースへの進出はならなかったが、第7、第8レースでそれぞれ2、1位。土居選手が通っていた横浜ジュニアヨットクラブ代表の中川二朗さん(74)から責める言葉はもちろん出ない。「(順位を落とした)初日は心配したけど、よく頑張った。ロンドンのときより力をつけている証し」とたたえる。
小学2年のときから、五輪にそろって出場している男子470級代表の兄、一斗選手(24)を追って洋上を遊び場としてきた。「きっかけは不純だった」と土居選手がはにかむ理由を同クラブのヘッドコーチ丸田郁朗さん(69)は知っている。
「せっかくお兄ちゃんもいるからと声を掛けたんだけど、なかなか踏ん切りがつかなくて。じゃあジュース20本あげるから一緒にやろうと」
最初は沖へ出るのを怖がった小学生の一人だった。だが、練習を重ねていくうちに土居選手は周りと違ってきた。