

初出場ながら銅メダルをつかんだ北京大会から8年。リオデジャネイロ五輪柔道女子52キロ級代表で、相原中出身の中村美里(三井住友海上)が強化合宿で心技体全てを整えようと躍起だ。3度目の大舞台で金メダルを獲得する以外の道は見ていない。
無我夢中で挑んだ2008年の北京大会、自らを追い込み、ぴりぴりとした気をまとって臨んだ2012年のロンドン大会とは違う。リオまで残り2カ月を切ってもなお、落ち着きを失わないでいられるのは27歳がベテランの域に達したからだけではない。
初戦敗退と苦い思いで終えたロンドン大会後、その年の10月に左膝前十字靱(じん)帯(たい)の再建手術を受けて長期療養した。翌13年も出場はわずか1大会。ただ、休養期間はいい充電になったという。
「手術、リハビリで初めて柔道から離れたが、新鮮でいい時間だった。一日一日の練習にテーマをもって臨むようになったし、試合でも広い視野を持てるようになった」。苦しい日々こそ転機だったと振り返る。
技量もまた向上の一途を遂げている。復活を印象付けた昨夏の世界選手権以降、国際大会で連勝街道を歩む。サッカーのリフティングで最高731回もこなせる器用な足から繰り出す小外刈りが武器だが、それだけではない。
ことし5月のワールドマスターズでは足技だけでなく、担ぎ技でもポイントを奪い頂点に立った。「最近は自分の技でポイントを取ることが少なかったので、投げる技を練習してきた。外国人選手にも足技だけじゃないと見せられたし、得意の足技も生きてくる」
今まで何度も表彰台のてっぺんに立ってきたが笑顔は少なかった。
「ずっと五輪の金メダルを追いかけてきた。五輪で金メダルを取ったら心の底から笑えるんじゃないかな」。夢をかなえ、はじけんばかりの笑みを地球の裏側から届けるつもりだ。