1. ホーム
  2. スポーツ
  3. その他スポーツ
  4. 神奈川からリオへ 世界を射抜け(上) 自分と向き合い探究

頭脳派アーチャー・大井一輝
神奈川からリオへ 世界を射抜け(上) 自分と向き合い探究

その他スポーツ | 神奈川新聞 | 2016年5月31日(火) 10:29

アーチェリー日本代表としてリオデジャネイロ五輪出場を狙う大井=慶大日吉洋弓場
アーチェリー日本代表としてリオデジャネイロ五輪出場を狙う大井=慶大日吉洋弓場

 射程に捉えたリオデジャネイロ五輪は外すつもりはない。新星のように男子のアーチェリー界に現れた大井一輝(慶大)は、競技歴6年目ながら今や国内トップクラスにいる。五輪最終予選となる6月のワールドカップ(W杯)トルコ・アンタルヤ大会に向けて、20歳は腕を磨く毎日だ。

 W杯の出場選手を決める、ことし3月の国内選考会。大井は2位に80点差をつけて圧勝した。W杯に向けての意気込みを問われると、「どの舞台にいてもやることは変わらない。やれることをやって前に進んでいくしかない」と顔色一つ変えず淡々と答えた。

 昨夏の世界選手権は、メンバー入りはおろか国内の最終選考会にも呼ばれなかった。ただ、若きアーチャーは自分のことを急成長したとは思っていない。「客観的に見れば早いかもしれないけど、やるべきことをやってきた。飛び級したというつもりはない」


 

行きつ戻りつ


 70メートル先の的を目掛け、72射を放つ。シンプルにして奥深い。常に一定したフォームで放てるわけではない。技術の正確性に加えて、屋外では天候が大きく左右する。

 6年に満たない競技歴の中で、大井はその技を少しずつ体得してきた。風が吹けば的上の旗や木々のざわめきを眺め、計算を繰り返す。

 「射ている場所、真ん中、的の前と風が全然違う可能性がある。どれだけ矢が風に乗っていくか射てみて、それをデータとして取って調整していく感じ」。慶大法学部で法制史を専門とする学究肌が競技に向かう姿勢にもにじみ出る。

 「自分と向き合い、限られた状況で力を発揮できるのかを感じられるスポーツ」は性に合っていたという。「勉強も自分と向き合う時間で、そういうのが好き。自己分析は得意な方だし、今自分がどういう状態なのかと知ることができる」。弓矢を取ったのも、その探究心からだった。



 

無欲の初優勝


 慶応高に進学した2011年春。中学時代は吹奏楽部でフルートを吹いていた。高校では体を動かすことがしたかった。

 「かっこいいな」。新入生の心を奪ったのは見たこともない器具がついた弓を操る洋弓部員だった。

 最初は練習用の弓で畳に向けて射ることすらできなかった。引くのに20キロの力を要する一般的な弓よりも、半分の力で放てるはずなのにうまくいかない。それでも、投げだそうとは全く考えなかったという。

 「音楽もやりたいなとは思ってたけど、射てみてやっぱりいいなと思った」。地道な基礎練習を繰り返し、迎えた1年後の夏、初めて出場した全国総体(インターハイ)で躍進を遂げた。

 それまで全国を知らなかった無名の存在は個人戦で勝ち上がり、決勝も6-2で快勝した。「優勝しようという強い気持ちがあったわけではないし、運もあった。だけど、会場では一番楽しめていたと思う」。無欲の初優勝だった。

 大井は、この夏を境に全国の有望株が集まる合宿にも呼ばれるようになった。とはいえ、まだ将来のビジョンは明確ではなかったという。

 「みんなで楽しくわいわいという感じ。大会に合わせたプランニングもなかったし、ただ、真ん中に当てるにはどうすればいいかということしか考えていなかった」

 この頃、部活動の延長線上にある世界はまだ遠くにあった。

 おおい・かずき アーチェリー日本代表。西有馬小-慶応普通部-慶応高-慶大3年。高校進学後に競技を始め、2年時の全国高校総体で初優勝。慶大2年時の昨秋には世界ユース選手権団体3位に貢献。ことし2月の全日本室内選手権で初優勝した。184センチ、75キロ。東京都新宿区出身。20歳。

 

オリンピックのアーチェリー競技 70メートル先の直径122センチの標的を狙って得点を競う。最高10点は同12.2センチの中心円で、外側になるにつれて1点ずつ低くなる。個人戦と団体戦(1チーム3人)があり、いずれもランキングラウンド(72射)を経てトーナメント形式で争う。トーナメントでは個人戦は1セット3射を最大5セット、団体戦(3人制)は1セットにつき1人1射ずつ(計3射)放ち、4セットで勝敗を付ける。

 日本勢はこれまで計5個のメダルを獲得しており、2012年ロンドン大会では古川高晴(近大職)が銀メダル、女子団体が銅メダルに輝いた。リオデジャネイロ大会には男女各64人(1カ国3人まで)が出場。男子は昨夏の世界選手権で古川ら35人が出場権をつかんでおり、日本勢は6月のワールドカップ・アンタルヤ大会(トルコ)で残る出場枠の獲得を目指す。

神奈川からリオへに関するその他のニュース

その他スポーツに関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング