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風よ吹け(下) セーリング土居兄妹の夢
神奈川からリオへ 思い一つ若さで疾走

その他スポーツ | 神奈川新聞 | 2016年2月23日(火) 09:43

左から力強さとクレバーさを兼ね備える土居愛実(平井淳一氏撮影、アビームコンサルティング提供)とリオデジャネイロへの切符をつかみ喜ぶ土居一斗(左)=昨年7月、デンマーク(平井淳一氏撮影、アビームコンサルティング提供)
左から力強さとクレバーさを兼ね備える土居愛実(平井淳一氏撮影、アビームコンサルティング提供)とリオデジャネイロへの切符をつかみ喜ぶ土居一斗(左)=昨年7月、デンマーク(平井淳一氏撮影、アビームコンサルティング提供)

 「若さで突っ走るしかない」。今夏の五輪出場をそろって決めた土居きょうだいの妹、レーザーラジアル級の土居愛実(22)=慶大=はそう自己分析するが、決して勢いだけではない。

 自然相手の競技。コンスタントに結果を残すためにはレース中の駆け引きはもちろん、風を読む力も問われる。

 「例えば地球の自転によって起きる風がある。海面だけじゃなくて、大きな枠での仕組みも捉えないといけない。海に出て感じているだけだと、その風がどういう影響があって変わったのかというのは分からない」

 コーチの教えだけでなく、時には気象学の文献もあさりながら知識を高めてきた。加えて技術面の成長もある。日本人が苦手としている風を背に受けて走るダウンウインドの克服だ。

 総合下位に沈んだロンドン五輪以降、海外の海でもまれてきた。「日本にない技術も海外の選手は持っている。波の乗せ方、乗せるための体の動かし方、セールの動かし方などを学んだ」。逆風にもたじろがないメンタルも鍛えてきた。
 



 兄を追うように小学2年でセーリングの道に進んだ。「お兄ちゃんがやっているのを見ていたんですけど、最初はやりたい感じじゃなかった」と苦笑する。「どうしようかなって思っていたらコーチがジュース20本やるからやってみろって。不純ですよね」

 毎週のように海の上で泣いていた。レーザーラジアル級に転じたのも高校進学時に2人乗りのパートナーが近くにおらず「渋々」という選択だった。だが、高校入学当初は小さな弁当箱を携えていた少女は、大きなタッパーを抱えて通学するまでになった。

 体格に勝る海外の選手が有利といわれるレーザーラジアル級で体格差を何とか埋めた。そして、「風が見える」とすら豪語する周囲の状況を察知する鋭敏な感覚で瞬く間にトップ選手へと駆け上がっていった。

 高校2年時に臨んだユース世界選手権で準優勝。「その時まで五輪にセーリングがあることも知らなかったけど、ここまでやってきたからという感じだった」。視界の先に夢が開けた。



 リオデジャネイロ五輪の出場枠が懸かった昨年11月の世界選手権で日本勢最上位の8位。不可能とさえいわれている五輪でのトップ10入りも現実味を帯びている。

 「ヨットを楽しむことを一番にしている。もちろんゴールじゃないけど、目標にしているメダルレースに残ったら存分に楽しめると思う」

 五輪の切符をつかんだ一斗もまたリオの海面に思いを馳せる。

 「ものすごく潮の流れが強いし、風もある。強い人が必ずしも勝つとは限らない」。五輪に出ることではなく、優勝が目標だと自らに言い聞かせている。「優勝を目指して技術の精度を完璧に近づけていく。100回やって99回成功しても1回のミスが出たら意味がないので」

 水平線の先には2020年東京五輪、江の島が待っている。「リオはただの通過点じゃない。メダルを取ってきたい」。若ききょうだいは思いを一つに疾走する。

 
 

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