93回目を迎えた東京箱根間往復大学駅伝は2日、東京・大手町から箱根町までの5区間、107.5キロで往路が行われ、総合3連覇と大学駅伝3冠を目指す青山学院大が3区でトップを奪ってそのまま逃げ切り、3年連続3度目の往路優勝を果たした。
神奈川大は2区で区間1位の鈴木健吾の活躍などで6位に食い込んだ。
3日は復路が行われる。
青学、3連覇と3冠へ上々
前評判通りの強さを発揮し、今年も青学大が往路のゴールテープを先頭で切った。3年連続制覇の立役者は38秒差を逆転した3区の秋山。「簡単ではないと思ったけれど、抜けばヒーローだと思った。うれしい」とほほ笑んだ。
2区でエース一色がトップを奪えず、差を広げられた。だが秋山は「飛ばし過ぎたらばててしまう」と冷静だった。13キロすぎで逃げる神奈川大を捉え、14キロ付近で突き放す。2年連続区間賞の奮闘で2位に1分22秒差をつけてたすきをつなぎ、一色は「自分は凡走だったけれど、プラスで返してくれた」と感謝した。
実力者がそろう布陣で原監督が不安視していたのが秋山だったという。普段の練習から安定せず出雲、全日本ではメンバーに入れなかった。転機は大会の2週間前。体の状態を見てもらったトレーナーから問題は精神面だと指摘され、開き直った。「肉体的には大丈夫だということ。プラスに考えられるようになった」。重圧と不安を克服し、勝利を呼び込んだ。
エースに頼り切らない層の厚さで、総合3連覇と史上4校目の大学駅伝3冠へ上々のスタートを切った。33秒リードで臨む復路では、補欠として登録している昨年区間賞の下田と田村を投入する予定だ。原監督は「速い、強いランナーが控えている。どんと構えて3連覇、3冠を目指す」と堂々と宣言した。
日大10位、川口快走「シードを」
日大の5区川口は13位から順位を三つ上げ、シード圏内となる10位でゴール。区間6位の快走で復路につなげた田奈中出身の3年生は「何としても10番以内に入りたいと思っていた。最低限の仕事はできたかな」と笑みを浮かべた。
主将として挑んだ2010年の全国中学校駅伝で、県勢初の全国制覇を達成。当時14人抜きの激走で優勝に貢献したが、この日も山上りで「自信があった」と一気にペースを上げる見事な走りっぷりだった。
昨年11月の全日本大学駅伝後に疲労から右膝に炎症を起こし、以降は別メニュー調整。「2週間前までは出られるのかも分からなかった」という不安も自身の快走で吹き飛ばした。
「復路でも苦しい戦いになる。必ずシード権を取ってもらいたい」。大健闘の21歳は思いを仲間に託し、吉報を待つ。
東海大15位 「悔しさしかない」
東海大は中山中出身の1年生、5区館沢が15位でフィニッシュ。全日本大学駅伝で区間賞の新星は14位でたすきを受けた直後、2人をかわし、7キロすぎまでは区間トップの走りだったものの、徐々に増していく山の勾配に力を奪われた。
「(8キロすぎの)宮ノ下のあたりから余裕がなくなった。弱気になってしまった」。左太ももの痛みも影響し、結果は区間13位。最後は倒れ込むようにゴールした。
昨年3月に青学大2連覇の立役者である神野大地(コニカミノルタ)と5区を試走し、「(青学大の)原監督に東海は館沢が速いって言っておくよ」と声を掛けられた。1区2位の1年鬼塚らとともに「黄金世代」と称されたが、「おだてられて天狗(てんぐ)になっていた部分があった」という。
もちろん、このままでは終われない。「力を出し切れず、悔しさしかない。ひたむきに頑張って来年リベンジしたい」。涙を拭って誓った。
日体大13位、来年へ雪辱誓う
流れを変えられなかった。2区を任された日体大の小町(藤沢翔陵高出身)は区間18位。順位を四つ落とす17位で引き継ぎ、「全然駄目だった」とうなだれた。
1年時に5区19位、2年時に1区11位。豊富な経験と昨年11月の全日本大学駅伝で区間賞を取った成長を買われ、3年生は箱根のエース区間を託された。「これまでより自信もあったし、調整もうまくいっていた」という。だが、本番ではピッチが上がらず、勝負の権太坂から挽回する気力も残っていなかった。
チームは後続3人がいずれも区間10位以内をマークし、往路13位。シード権獲得となる10位には34秒差と復路に望みをつなげた。ただ、悔しさはやはり残る。
「結果もこの通りで、絶対的なエースではなかった。来年はそういう存在として、2区を走りたい」。集大成の4年目に向けて明確な目標が定まった。
国士舘大・石井は悔しい19位
国士舘大の主将石井は1区で区間19位。チームが20位で折り返したこともあり、藤沢翔陵高出身の4年生は「主将としてチームに流れをつくりたかったが、ふがいない走りをしてしまった」と声を絞り出した。
前回大会は予選会11位で惜しくも出場を逃していただけに、3年ぶりの大舞台に懸ける思いは強かったという。「走ってる最中も仲間を思ってたすきを握りしめ、一歩一歩前に踏み出すことができた。1年間ついてきてくれたチームには感謝しかない」とキャプテン。「後はみんなを信じます」と復路での巻き返しを期待した。
関東学院大・広瀬「経験伝えたい」
関東学院大の広瀬が関東学生連合の一員として5区を走った。自ら志願した山上りに挑んだが、前の走者との差を詰められず。「10キロすぎがポイントだと藤原監督(中大)からも言われていたが、勝負どころで力を出し切れなかった」と残念そうだった。
それでも、関東学院大のユニホームには地元ファンからひときわ大きな声援を送られた。4年生はその幸福感もかみ締め、「チームとしても箱根を目指せる環境にあるし、4年間走らずに終わるのはもったいない。この経験を伝え、来年は全員で走ってほしい」と後輩たちに期待した。