全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来年元日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間100キロのコースで行われる。神奈川からはプレス工業(藤沢市)が8年連続8度目の出場。若手の台頭で力をつけてきた県内実業団の雄は過去最高を更新する15位以内を視野に入れている。
抜きんでたエースはいない。だからこそ、し烈な競争でチーム力は確実に上がってきた。「夏場もそれぞれ自主的に走り合っている。全体的にレベルアップしている」という藤田嘉監督が、その要因に挙げるのが頼もしさを増してきたフレッシュな面々だ。
駒大卒2年目の大谷もその一人。前回大会は外国人ランナーが多くエントリーする2区に抜てきされ、区間36位に沈んだものの、その経験を今季につなげてきた。同じく2年目の池田、3年目の大西らも中堅やベテラン勢を脅かすほどの走力を身に付けてきたという。
若手の突き上げはカンフル剤にもなっている。主将の川村は「前々からいたメンバーも前回より力をつけた。ロードでも結果を残す選手が出ているし、駅伝の実績も昨年より積まれて戦える手応えがある。元日が楽しみなチーム状況」と言う。指揮官も「各ポジション(区間)に2人ずつ候補がいる」と選手層の厚さに好感触を得ている。
11月の東日本実業団駅伝は3時間53分13秒の11位。入賞圏に届かず、やや不本意だったものの、指揮官は「1桁くらいで渡せるかと考えていた1区が予想以上に遅れたが、全員がそれをカバーした」とあくまで前向きに捉えている。
過去最高は前々回の21位。もちろん、それを上回る成績が最低限の目標だ。「チームとしてもいい状態できている。10番台がターゲット」と川村。進化を示す8度目の舞台が近づいている。
経験豊富な苦労人 鍵握る中堅ランナー・山田
若手が成長しているとはいえ、15位以内の目標を達成するにはやはり中堅の力が不可欠だ。29歳の苦労人、山田翔太は自らに集まる視線の熱さを意気に感じている。
11月の東日本駅伝でエース区間の2区を疾走。区間11位ながらも順位を二つ上げ、その後の巻き返しにつなげた。
「最低限の走りはできたかな。ニューイヤー駅伝でもそこそこ走れそうという状況」。一喜一憂しないあたりが経験豊富なランナーらしい。
ニューイヤーの舞台に立ったのは2016年。順大時代は2、3年時に箱根路を駆け、出雲全日本選抜、全日本選手権にも出場しているが、卒業後の10年に入社したカネボウで辛酸を味わった。
在籍した4年間で目立った成績を残せず「戦力外のような形」で退社。ただ、競技への情熱は尽きていなかった。
「まだ走れる。もっとやれる」。所属チームを探しながら1年半、1人で走り続けた。そんな日々の中で巡り合ったのがプレス工業。「和気あいあいとしていて、それでいて上岡ヘッドコーチが厳しい方。これから上を目指す、いい雰囲気を感じた」という。何度も合宿に参加し、走れる場所をつかみ取った。
前回大会は6区で区間15位。故障の影響もあったが、本人には忸怩(じくじ)たる思いが強い。狙うのはもちろん前回以上の区間順位。「実業団というシステムの中で一番メインで最大の目標である大会。そこで自分の走りが(チームに)求められているというのが分かるし、期待に応えたい」