世界との距離
こうも一方的だと、日本は果たしてW杯に出場する意味はあるのか、と思われる。
これは、1995年6月6日の本紙に掲載されたワールドカップ(W杯)南アフリカ大会1次リーグ最終戦でニュージーランド(NZ)に敗れた日本の戦いを報じた記事の一文である。
スコアは今なおW杯史上ワーストの失点記録となっている17-145。後に「ブルームフォンテーンの悲劇」と呼ばれることになる不名誉な一戦で、関東学院大エースとして91年度の全国大学選手権で初の4強入りに押し上げたフルバック(FB)の松田努(49)がピッチに立っていた。
ラグビー王国の波状攻撃を食らい続け、「守りのとりで」の松田は時計ばかり見ながら、ただただノーサイドの笛を待っていたという。
「早く終わってくれということしか考えていなかった」。21本もトライを奪われ、80分間という時間が、とてつもなく長く感じられた。