昨年12月6日に閉幕した競泳の日本選手権。当初は昨年4月に東京五輪代表選考会として予定されていたがコロナ禍で延期され、異例の師走開催となった。リオデジャネイロ五輪代表の女子自由形・五十嵐千尋(T&G、日大藤沢高出身)も4種目に登場。今年4月の選考会で2大会連続の出場権を狙うスプリンターは大きな収穫を手にし、希望を持って新たな年を迎えた。
競泳の五輪会場となる東京アクアティクスセンター(東京都江東区)。本来なら真新しい施設に多くの観客を迎え、代表選考レースを兼ねた一発勝負の日本選手権が昨春に行われていたはずだった。遅ればせながら新プールのお披露目となった今大会は、トップスイマーたちが2021年へスイッチを切り替える場にも重なった。
五十嵐がこれほどすがすがしい表情を見せたのはいつ以来だろう。例年オフに入るこの時期は心身ともにピークから遠い上に、今回は選考レースではなかったため「調整の一環」と位置付ける選手もいた。だが、それらを差し引いても、充実した様子の笑顔が期待すべき何かを示唆していた。
大会3日目の100メートル自由形で54秒75のシーズンベストを出して3位に食い込んだ。前半50メートルまではトップ3人が横並びの展開。レース後に強調したのは「スピードの強化が生かせた」という点だ。