
国内の女子プロサーフィン界で昨年、史上最年少で頂点へ駆け上がった湘南・鵠沼のガールズサーファーが世界へ羽ばたこうとしている。見据えているのは世界有数のサーフスポットを年中転戦し続けるトップリーグだ。
「やっぱり安心しますね。海外に比べれば小さいし、パワーもない。それでも来ちゃいます」。ホームグラウンドの湘南・鵠沼で、ひときわきれいに割れた波に乗り、屈託ない笑顔を見せる。
サーファーの名は大村奈央さん(18)。今春、清泉女学院高校(鎌倉市城廻)を卒業したばかりだ。既に世界大会に向けた練習や、雑誌の撮影などで世界のサーフスポットを転々とする日々を送っている。
2003年、11歳のとき家族旅行のハワイで波乗りを体験したのがきっかけ。その後、自宅近くの鵠沼海岸でのめり込んだ。
◆国内敵なし
わずか2年後の05年には世界プロサーフィン連盟(ASP)のワールドプロジュニアで日本代表入り(ショートボード部門)。07年以降は国内のアマチュア大会を総なめにし続けてきた。
満を持して10年、国内プロリーグ(JPSA)に参戦。1年目の最優秀選手に贈られるルーキー・オブ・ザ・イヤーと、年間グランドチャンピオンの両方を史上初めて最年少で獲得する快挙を成し遂げた。
高校卒業を機に目指すのは、わずか18人で世界の頂点を奪い合うワールドチャンピオンシップツアー(WCT)への参戦だ。世界各地を転戦し優秀な成績を収め続けることでしかWCT入りできない。男女とも日本人でこのツアーに参戦した選手はかつていない。
「世界で勝てるところを見せたい。活躍すれば日本でもスポーツと分かってもらえるはず」
◆世界との差
伝えたいのは競技としての認知だ。趣味や遊びと思われがちなサーフィンだが、世界では、数千人のプロ選手がWCTを目指し熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げ、厳正な審査体制も確立されている。
歴史のあるオーストラリアや米国・ハワイだけでなく最近ではブラジルや欧州勢も力を付け、中には世界を転戦する際に国として選手を支援し、専属コーチを整えているチームもあるという。
「日本の場合は全部自分。最近知ったんですがサーフィンにもトレーニングってあるんですよ。どうすれば世界で勝てるのか。教える専門の人も必要」
いつしか、屈託のない笑顔は、世界を舞台に、挑戦しようとする若きプロ選手の一途(いちず)なまなざしに変わっていた。
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