
高校カヌー界の強豪、陸上自衛隊高等工科学校(横須賀市)の3年生が今月、ひのき舞台に上がる。カヌースプリントジュニア世界選手権(28~31日・ベラルーシ)に出場する前原喬至だ。競技歴約2年ながら代表の座をつかんだ17歳は「一つでも多く勝ち上がりたい」と、世界との真剣勝負を待ちわびている。
陸上自衛隊八尾駐屯地がある大阪府八尾市で育ち、「自衛官は格好良くて憧れだった」と親元を離れて同校へ。右肘のけがで野球を中学で諦めていたこともあり、「新しいスポーツがしたい」と筋骨隆々の体を目指してカヌー部に入った。
2年時に全国高校総体に初出場するなど、めきめきと成長。ことし5月に開かれたカヤックシングル(1人乗り)の最終選考記録会で2位を3秒引き離して優勝し、代表権を獲得した。
「練習を何本やっても疲れをため込まず、技術の吸収も早い」。同校の佐伯将士監督(38)は筋肉の柔軟性とセンスの良さにほれ込む。
その根っこには「意識の高さ」(佐伯監督)があるという。自衛隊の訓練と学習を両立するために練習に多くの時間を割けない。だが、部の名物メニューでもある懸垂で1日300回を日課にするなど日々励み、前原は「(水上練習が少なくても)不利だと思ったことはない」と言い切る。
強豪の欧州勢と戦う今大会は絶好の腕試しの機会だ。「スピードが出れば出るほど楽しい」というカヌー。170センチ、65キロの鍛え上げた肉体で挑む前原は「日本ではマイナー競技だが世界はレベルが違う。準決勝、決勝まで残りたい」と強い決意を込めた。