
高校テニス界で頂点を極めた18歳が、神奈川からプロの世界へ羽ばたいた。湘南工大付高2年だった2014年に、男子シングルスで全国2冠に輝いた高橋悠介(フリー)だ。中学から国内外の大会で鍛錬を積み、ことし1月にプロ転向。「グランドスラムのセンターコートで勝つこと」を目標に掲げ、今日も世界各国で戦っている。
プロの世界では小柄な170センチの体は、コートに立つとそれ以上に大きく映える。
軽快なフットワークと「相手をコートの外に追い出す」的確なストローク。もつれれば1試合で2、3時間はかかる我慢の競技。高橋は、力任せではなく粘り強くポイントを重ねるすべを藤沢市にある名門、荏原湘南スポーツセンター(荏原SSC)で身に付けた。高校1年の全国高校総体では湘南工大付高の団体優勝に貢献し、翌年はシングルスで同大会と全日本ジュニア選手権U-18(18歳以下)を制した。
もちろん「ジュニアの結果はジュニア。プロではゼロから」と自覚している。スポーツメーカーから用具提供は受けてはいるが、遠征費用は自己負担。所属先もまだなく、結果を残して初めてスポンサーが付く厳しい世界だ。
幼少期にロジャー・フェデラー(スイス)に魅了され、テニスを始めた。錦織圭(日清食品)が日本人選手で16年ぶりに男子プロツアーで優勝を飾った2008年の当時、高橋は10歳。少年が世界のトップを目指すのも自然の流れだった。
中学時代、チャリティーイベントで錦織とプレーする機会に恵まれた。憧れの選手とプレーできた感激以上に、「いつか本気の試合ができるようになりたい」との思いが込み上げ、練習に打ち込んだ。
高橋はプロ転向した1月下旬に米国のフューチャーズ大会のダブルスでプロ本戦初勝利。2月の全日本室内選手権ではシングルスで初戦敗退した。辻雄馬コーチ(36)が「技術も精神も足りない。もまれないと強くなれない」と言うように、今ははい上がる日々だ。
高橋の世界ランキングは1400位前後で、上位大会に出場するには相応の世界ランキングが必要になる。最下級のITF(国際テニス連盟)主催のフューチャーズ大会の賞金は、総額で1万ドル(約110万円)程度。生活を懸けて、しのぎを削る。
昨年9月、全米オープンジュニア男子シングルス2回戦で、生涯のライバルになるかもしれない選手に出会った。
テイラー・フリッツ(米国)。193センチの長身から「力強さのレベルが違う」(高橋)サーブとストロークに。3-6、4-6で敗れたが「同い年として刺激になった」。
その大会を制したフリッツは同月、プロ転向。今年2月のメンフィス・オープン決勝では錦織相手に4-6、4-6と善戦し、優勝賞金約11万ドル(約1200万円)まであと一歩に迫った。
錦織に続く選手がなかなか台頭できない日本のテニス界において、迷いなく「錦織さんに続きたい」と言い切る。「四大大会で勝って東京五輪は日本の主力でいたい。決めたからにはプロで戦う。はい上がっていく」
たかはし・ゆうすけ 2015年度U-18(18歳以下)日本代表。4歳でテニスを始め、小学1年から荏原湘南スポーツセンターに所属。14年8月の全国高校総体、全日本ジュニア選手権U-18の男子シングルスで優勝し、ことし1月からプロとして活動をスタート。今月、湘南工大付高を卒業した。170センチ、69キロ。右利き。横浜市神奈川区出身。18歳。
