地図を読み、チェックポイントをたどりながらゴールを目指して山野を駆けるスポーツ、オリエンテーリングに期待の若手がいる。愛知・東海高出身で横浜国大1年の稲森剛(18)。10日から栃木県で行われる日本学生選手権でミドルディスタンスと団体戦のリレーの2種目で頂点を目指している。
◆地図を走る感覚 気持ちいい
オリエンテーリングは山野のコースを舞台に地図とコンパスを使ってコースに設置されたコントロールと呼ばれるチェックポイントを順番通りに通過し、ゴールまでの到達時間を競う。種目は距離により分かれているミドルやロングなど。2020年東京五輪の追加種目に応募して1次選考で落選したが、日本協会によると、競技人口は7千~8千人といい、幅広い年齢に親しまれている。
稲森は昨年12月に香港で開かれた第1回アジアジュニア&ユース選手権ミドルディスタンスを制したホープ。北欧で盛んなオリエンテーリングに出会ったのは中学1年のときだったという。
「運動部に入りたかったけど、運動が得意じゃない。そんな自分でもできそうだった」と軽い気持ちで、愛知・東海中のワンダーフォーゲル部に入部。「走力で負けていても地図が読めれば勝てるのが面白かった」と徐々に競技にのめり込み、高校3年でジュニアの世界選手権に出場するまでに成長した。
練習は走力を鍛えるためのランニングと、地図を読んで適切なルートを決めるイメージトレーニングが中心。多い日で20キロを走り、出場した大会の地図を見返して本番の走りをイメージする。
競技中は常に先のルートを考えながら走らないと大幅なロスが生じる。「うまくいくとまるで自分が地図の上を走っているような感覚になれる。その瞬間が気持ちいい」と魅力を語る。
競技は主に山や森の中で行われ、実戦的な練習の機会は限られる。そのため、練習場として大学のキャンパスを駆け回ることもしばしばで、「他の学生から不思議がられることもある」と苦笑いする。
昨年10月の日本学生選手権では、スプリントとロングディスタンスが行われ、2種目とも制覇。今月のミドルディスタンスとリレーで頂点に立てば、4種目制覇の快挙だ。目前に迫る偉業に向けて「狙える位置にある。絶対に勝ってやるぞという気持ち」。若さあふれる18歳の目は輝いている。