
レスリングの全日本選手権第2日は22日、東京・代々木第二体育館で行われ、男子グレコローマンスタイル75キロ級で神奈川県出身の金久保武大(ALSOK)は準決勝で初優勝した屋比久翔平(日体大)に敗れた。
9月の世界選手権で10度目の優勝を果たした女子58キロ級の伊調馨(ALSOK)が通算12度目の日本一に輝き、4連覇を目指すリオデジャネイロ五輪代表も決めた。
日本協会の規定で、世界選手権のメダリストは今大会に出場すれば五輪代表に決定する。女子69キロ級で世界選手権3位の土性沙羅(至学館大)も旧67キロ級から続く連覇を5に伸ばし、五輪切符を手にした。
男子フリースタイルで97キロ級は山口剛(ブシロード)が旧96キロ級から4連覇し、125キロ級は山本泰輝(拓大)が初優勝した。グレコローマンスタイルは98キロ級の斎川哲克(栃木・足利工高教)が5年連続通算7度目、85キロ級の岡太一(自衛隊)が2年連続通算4度目の制覇。非五輪階級の71キロ級ではシドニー五輪銀メダリストの永田克彦(レッスルウィン)が男子で大会史上最年長となる42歳で制し、13年ぶりの日本一に輝いた。
「恩返しできず心残り」
試合終了を告げる笛がなると、金久保はその場に崩れ落ちた。男子グレコローマン75キロ級で昨年の仁川アジア大会銀メダリストが準決勝で敗退。「負けたら終わりと決めていた」。五輪への夢があまりに早くついえた29歳は引退をにおわせた。
1-0の第2ピリオドだった。「僕が持っているのはあれしかない」と自信を持つ俵投げが返された。逆にマットになぎ倒され、1-3の逆転負けを喫した。
昨年の全日本選手権で初優勝を飾り、6月の全日本選抜でも連覇を達成。同階級では五輪代表に最も近い存在だった。7月に痛めた左手は万全ではないが、「持てる全てを出した」。そう言いながらもこみ上げる涙が止まらない。
前回のロンドン五輪は世界最終予選で敗退。一度は競技から離れることも考えたが、再びマットに戻したのはサポートメンバーとして触れた五輪の熱気だった。「今まで11年間続けてこられたのは家族をはじめ、いろいろな人の支えのお陰。結果で恩返しできなかったのが心残り」。今度は自分が輝く姿を見せたい一心で励んできた。
日体大入学後に始めたレスリングにひとまず区切りをつけるという。「(今後も)何らかの形で携わりたい。今の僕をつくり上げてくれたのはレスリングなので」。3位決定戦では8-0と快勝。感謝の思いを込めた集大成のマットで、最後に繰り出したのはやはり大技の俵投げだった。
「もう一度ゼロから」
グレコローマンスタイル75キロ級で、全日本学生選手権で同級を制している阪部(神奈川大)はベスト8で敗退。インカレ王者は「優勝しか考えていなかった」とうなだれた。
優勝した屋比久との準々決勝。第2ピリオドでビッグポイントを取られ、2-5とひっくり返された。「前半は有利に運べたがグラウンドで攻め込まれ、止まってしまったのが敗因」と阪部。和歌山国体に続いて再び屋比久に屈し、「雪辱するつもりだった。もう一度ゼロからやり直したい」と誓っていた。
消防局員倉野は準V
男子グレコローマンスタイル71キロ級で、横浜市消防局の倉野が準優勝に輝いた。シドニー五輪銀メダリストの永田との決勝では、果敢に攻めたが42歳のベテランに跳ね返された。それでも「世界で闘ってきた人の強さが身に染みた」と笑みを浮かべた。
母校の法大コーチからことし4月に市の消防局員に転身し、現在は都筑消防署で勤務する。練習は週1度ほどと格段に減ったが、フリースタイル65キロ級に挑んだ小島の胸を借りるなどして技を磨いてきた。
五輪では実施されない階級ながら躍進した24歳は「運もあったが、仕事をしながらでも結果に結びついて良かった。また永田さんと闘って雪辱したい」と充実感を漂わせた。