県内で自転車ロードレース開催の機運が高まっている。県自転車競技連盟が来年秋にも大会実施を検討、既にレース場の選定にも入っている。全国3番目に多い愛好者がいながら、これまで道路事情などから大型レースは実現できていなかった神奈川。それだけに、関係者は「競技力向上に結び付けたい」と鼻息が荒い。
同連盟によると、レースは来年10月ごろに開催予定で、周回コースを設定して3時間の耐久レースとする考えだ。一般愛好者のほか、高校、大学などの若手選手にも参加を呼び掛けるという。
一般的なロードレース大会の開催には1周10キロほどの起伏のあるコースが必要で、交通量の多い県内では公道を使った大規模なレースは困難だった。かつて開催していた県の選手権大会も静岡県の日本サイクルスポーツセンターを使っていた。
そこで今回のレースは平らな路面を走る耐久レースとすることで問題を解消。現在、臨海部の大規模工場や米軍基地周辺などを候補地として調整している。
一方、大会をきっかけに競技力のアップにもつなげたい思惑もある。
自転車人気は年々高まっており、県内の競技登録者数も465人で全国3番目に多い。だが、今秋の和歌山国体では総合21位に低迷するなど、競技人口とは裏腹なのが現状という。
同連盟の山上義明理事長は「ジュニア年代の発掘、育成の場がなく、年代を超えて県内のトップ選手が切磋琢磨(せっさたくま)する場もない」と指摘、今回の大会で「トップ選手が競うことで競技力は高まるし、レースを身近に感じることで自転車を志す子どもたちを増やしたい」と期待する。
さらに近年のブームで公道を走る愛好者が増えており、「危険な運転も一部では見られる」と同理事長。ルール順守の契機にもしたいという。
目指しているのは、街中に設けた短いコースを何度も周回する「クリテリウム」という大会だ。さいたま市で開かれている大会にはツール・ド・フランス優勝者や国内のトップ選手が集まり、2013年の第1回には約20万人の観客が沿道に詰め掛けた。
山上理事長は「埼玉は競技力も順調に伸びている。神奈川も行動を起こさなければ取り残される」と強い危機感を示し、「沿道の風景も神奈川らしいレースにしたい」と夢を膨らませている。