「世界に通用するマラソンランナーを」。そんな合言葉を旗印に、DeNA陸上部が昨春、小中学生を対象に県内と都内で設立した下部組織「DeNAランニングクラブアカデミー」。中長期的な視野で選手を育成する方針のもと、さまざまな競技で部活動に所属している「金の卵」たちが集まり始めている。
昨春、1期生として同アカデミー平塚校のU-15に入団したのは17人の中学1年生。陸上部員は半数ほどで、サッカーやラグビー部、中には合唱部と掛け持ちで週2回の練習に参加する選手もいる。1競技に絞らなくていいことで、「陸上も好き」な中学生の受け皿となり、ジュニア選手発掘の可能性を広げる狙いだ。
合唱部員も
全国レベルで数々の賞を受賞する町田市立鶴川第二中で合唱部に所属する鹿野武俊さんは「中学に入学するときは陸上部か、合唱部かで悩んだけど、今はやりたいことをどちらもできている」と言い、父・武文さんも「自分の可能性を広げられるし、地元以外の友達もできて、すごく刺激を受けている」と往復2時間かけて送り迎えしているという。
同校は週2回、ShonanBMWスタジアム平塚や東海大で練習している。中大やエスビー食品で監督も務めたDeNA陸上部の田幸寛史ヘッドコーチが指導するほか、東海大の両角速駅伝監督が育成テクニカルダイレクターとしてサポート。昨夏は菅平高原で合宿を張ったほか、DeNA陸上部のトップランナーと交流して子どもたちの好奇心を刺激した。同コーチは「いろんな取り組みから、打開策のヒントになればいい。週2回の練習でも、迷いなく、継続すれば到達できる部分がある」と話す。
世界との差
昨年11月に日本陸連長距離・マラソン強化戦略プロジェクトリーダーにも就いたDeNA陸上部の瀬古利彦総監督は「今の選手たちは強度を上げた練習ができなくなっている。子どもの生活環境が変わってきた影響も大きい。手を打たないといけない」と、アカデミー設立の狙いを強調する。
マラソン男子の日本記録は2002年に高岡寿成が打ち立てた2時間6分16秒から15年間更新されず、世界との差は広がる。将来を見据えた10年がかりのプロジェクトが2年目を迎える。
同アカデミーは、2017年度の新中学1年生男子を対象に、今月29日に平塚市内で2期生のセレクションを開催する。希望者は18日までにDeNA陸上部のホームページからエントリーする。問い合わせも同ホームページへ。