
レスリングの全日本選手権最終日は23日、東京・代々木第二体育館で行われ、女子53キロ級の吉田沙保里(ALSOK)が決勝で、世界選手権55キロ級で優勝している川崎市高津区出身の浜田千穂(日体大)に開始53秒でフォール勝ちし、昨年までの55キロ級を含め12度目の日本一となった。個人戦の連勝記録は192に伸びた。
同58キロ級の伊調馨(ALSOK)も通算11度目の頂点に立ち、同63キロ級は仁川アジア大会女王の渡利璃穏(アイシンAW)が決勝で伊藤友莉香(自衛隊)に敗れた。
男子フリースタイルで74キロ級の世界選手権銀メダリスト、高谷惣亮(ALSOK)が優勝。57キロ級はロンドン五輪55キロ級銅メダルの湯元進一(自衛隊)が1回戦で敗れ、森下史崇(ぼてぢゅう&ボムス)が最軽量級を3年連続で制した。
グレコローマンスタイルは59キロ級で倉本一真(自衛隊)が勝ち、アジア大会金メダルの長谷川恒平(青学大職)は準決勝で敗れた。98キロ級は斎川哲克(栃木・足利工高教)が制した。
最優秀選手に贈られる天皇杯は高谷が獲得した。
◆満身創痍も夢諦めぬ
満身創(そう)痍(い)の状態で大金星を挙げられるほど、世界大会15連覇中の女王は甘くはなかった。
世界選手権覇者同士の対決となった女子53キロ級決勝で、浜田は国内で連勝街道をひた走る吉田に完敗。左膝後十字靱帯(じんたい)損傷の痛みを押して強行出場したが3年連続で決勝のマットに沈み、「100パーセント(の力)でも勝てるかどうかだった。完全な練習不足です」と泣き崩れた。
何もできなかった。開始早々に果敢にタックルを試みたが、ねじ伏せられると開始わずか53秒でフォール負けした。「気持ちでは負けないようにと思っていたけど…」。雪辱の一戦はあまりにもあっけなく幕を閉じた。
11月下旬に交通事故で大けがを負った。9月に初の世界女王に輝き、次の五輪に向けて非実施の55キロ級から53キロ級に階級を変更。練習、減量ともに順調にこなしていた最中の出来事だった。「なんでこんな時に…」。悔し涙が止まらなかった。
医者からは欠場を勧められたが、世界女王としての誇り、そして五輪への思いが22歳を再びマットに向かわせた。タックルを繰り出せば軸足に激しい痛みが走る。そんな逆風下でも、この日は初戦から3試合をフルタイムで戦い抜き、決勝まで勝ち上がった。
雪辱のチャンスはまだある。世界選手権への出場権を懸けた全日本選抜は来年6月。「吉田さんを倒さないと五輪には行けない。絶対に次は勝ちます」。夢舞台を諦めるわけにはいかない。浜田は何度だって食らいつく。
【神奈川新聞】