検証神奈川2016【上】攻撃サッカー
スポーツ | 神奈川新聞 | 2016年12月6日(火) 10:25

■大一番 欠けたピース
鹿島の史上最多8度目の年間優勝で幕を閉じた今シーズンの明治安田J1。県勢はクラブ創設20周年の川崎が大いに盛り上げたが、第1ステージ制覇を逸したのに続き、最後のチャンピオンシップ(CS)でも鹿島との準決勝に敗れて初のリーグタイトルを逃した。かたや横浜Mは2連覇を成した2004年以降、09年と並んで最も低い10位に甘んじ、リーグ終了後も監督の続投に端を発した騒動に揺れている。両チームの戦いぶりを検証した。
「いいシーズンだったが、残念ながら最後に大事な選手を失った」。視察に訪れていた日本代表監督、ハリルホジッチ氏の言葉はこの一戦を端的にまとめていた。
11月23日のCS準決勝。鹿島の激しいプレーを前にし、今季リーグ戦を席巻した川崎のパスサッカーは明らかにつながりを欠いていた。
止める、蹴るを重要視する風間スタイルは相手の圧力が強力であろうと技術でいなすのが真骨頂だ。ただ、厳しい表現になるが、それも申し子と言える選手がいてこそだったことが皮肉にも大一番で表れてしまう。
大久保、小林、中村のトライアングルで奪った今季のゴール数は39。J1に限ればクラブ史上2位となるチーム得点数68の6割近くを占めるが、その一角の小林がいない。さらに中盤の底にはボールの落ち着きどころである大島も不在だった。
中村も途中出場。大久保は中盤に下がって打開しようとしたが、普段の恐怖心を相手に抱かせるには至らない。鹿島の体を張った守備にもいら立ちを募らせたエースは悔しげに何度もピッチをたたいた。
J最強の攻撃陣は無得点に終わり、一発勝負の残酷さを味わった。
ただ、日本代表監督の言葉だけでは足らないものがある。等々力を涙で後にした昨季までの3年連続得点王はこうも指摘する。「勝負に対する厳しさがあれば、どこかで優勝していると思う。言い続けてきたけど、最後までこのチームを変えられなかった」