ロードレース世界選手権の「第15戦日本グランプリ」の決勝が12日、栃木県・ツインリンクもてぎで行われ、最高峰のモトGPクラス(24周、1周4801キロ)でマルク・マルケス(スペイン、ホンダ)が2位に入り、2年連続で総合優勝を獲得した。21歳237日での連覇は、1963年にマイク・ヘイルウッドが23歳152日で達成した最年少記録を51年ぶりに塗り替える快挙。マルケスは「2年連続のチャンピオンは、とてもうれしい。このタイトルは、家族やチームなど支えてくれたすべての人たちにささげたい」と喜びを語った。
レースは予選2番手からスタートしたバレンティーノ・ロッシ(イタリア、ヤマハ)がホールショットを奪うと、そのまま快調な走りで後続をけん引した。4周目に同じヤマハのホルヘ・ロレンソ(スペイン)と競り合い、ロレンソがトップに浮上。ロレンソは着実な走りで、他者を引き離した。
マルケスは4番グリッドからのレースで、じわじわと差を縮め、総合優勝争いはポイントランキング2位のロッシとの一騎打ちに。互いに譲らないバトルを繰り広げ、集まった4万2856人をわかせた。
熱戦を制したのはロレンソ。マルケスは2位でフィニッシュし、日本勢はスポット参戦の中須賀克行(ヤマハ)が12位、青山博一(ホンダ)は13位だった。
レース後、史上最年少で優勝した昨年に続き総合優勝を果たしたマルケスは、ウィニングラン中、マシンをコースに止めると、真っ赤な鎧をまとった武者から刀を受け取り、渡されたロープを刀で切断。「1」と書かれた真っ白な風船を空に飛ばすパフォーマンスで会場をどよめかすと、数字の「1」と「2014 MotoGP WORLD CHAMPION」と書かれた特製ヘルメットを被り再びマシンに飛び乗ってパレードランを続行。スタッフが出迎えたパルクフェルメでは胴上げで祝福され、表彰台では1位のロレンソ、3位のロッシとシャンパンファイトで喜びを爆発させていた。
レースは19日に第16戦オーストラリア、26日に第17戦マレーシア、最終戦は11月9日にスペインのバレンシアで予定されている。
◆横須賀から世界へ Moto2クラス参戦中の長島哲太
横須賀市出身の長島哲太(22)が、モトGPに次ぐカテゴリーのMoto2クラスに参戦している。8月末に英国であったレース中に右脚を骨折をする大事故に見舞われレースから離脱。母国グランプリでの復帰を目指していたが、ひざや足首に痛みが残っていることから、大事を取り欠場を決めた。現在は横須賀の実家に戻ってリハビリの日々だが、ツインリンクもてぎを訪れ、「最終戦のバレンシアグランプリで復帰したい」と誓った。
秦野中井にあるサーキットでミニバイクにまたがったのが3歳のとき。「自転車みたいに足でこがなくても、アクセルを回せば進むのか!」と驚き、その楽しさにはまった。最高峰クラスのモトGPに参戦中の青山など、たくさんの名ライダーを生んだ千葉北のサーキットで経験を重ね、県立三浦臨海高校在学中に全日本ロードレースに出場。遠征費用をアルバイトで稼ぎながらレースへの参戦を続けてきた。2013年10月に、負傷者代役として日本グランプリに初エントリー。今季初めてフル参戦を決め、世界の舞台に。日本と世界の差は「みんな血の気が多くて、バトルが激しい。あたりも強いし、国内のレースでは考えられなかったこと」と世界の厳しさを体感した。
バイクは長島にとって、「自分の存在意義を示してくれるもの」と言う。「小さいときは、『楽しい』という気持ちがいっぱいあって、レースに出るようになると『周囲に負けたくない』という気持ちが芽生えて。楽しいと思えるレースに出て、結果を残したとき、周囲が一緒に喜んでくれるのを見て、『僕が走ることによって、周りを元気にしたり、喜んでもらえるなら、もっと速くなろう』と思ったんです。レースは自分の居場所。今はケガでレースを離れていますが、3月の開幕戦からここまで、タイムも順位も上がってきて、手ごたえもものすごくあります。僕の最終目標はMotoGPのチャンピオンになること。その目標に向かっていまは、周囲のライダーの走りを見たり、たくさんのことを学ぶとき。最終戦では全力で走り、結果を出したいです」と決意をにじませた。【西村綾乃】