1-2の後半39分。左サイドでパスを受けた湘南のDF島村はとっさに切り替えた。相手DFに寄せられ、利き足の右は使えない。一心不乱に逆の足を振った先でゴールネットが揺れていた。
昇格を決める、およそ20メートルの同点ミドルシュート。天を見上げて両拳を握り締めた。「たまたま。気持ちいいシュートが決まった」。背番号30はそう言って笑った。
左サイドバックは隠し持った牙を、この時のために研いでいた。早大の後輩であるDF三竿に定位置を奪われ、出場機会が少ないながら練習でひた向きにトレーニングを積んできた。
29歳。フィールドプレーヤーでチーム最年長。選手会長としての自負もある。「悔しかった。見返してやろうと」。ただ前を向き、ひたすら汗を流す姿をチョ・グィジェ監督もずっと見ていた。
指揮官は、7月5日の群馬戦以来の今季2度目となる先発のピッチへ送り出す。「苦しい経験でも前向きに捉えていた。だからあのシュートが入った」。チョ・グィジェ監督は今季初得点が偶然ではないと強調した。
2008年に湘南に入団。以来、3度全ての昇格のときをピッチで味わっている。「シーズン前から、この瞬間をピッチで迎えたいと思っていた」。勝負強いベテランはこう続けた。「J1で戦うには、残り9試合きっちり勝たないと」
【神奈川新聞】