大きなストライドで助走をとり、164センチの恵まれた体を空中でしなやかに踊らせた。女子走り幅跳び決勝。予選で大会新の5メートル64をマークしていた東は「優勝はうれしい。でも、もっと記録を伸ばしたかった」と決して浮かれなかった。
自己ベストの5メートル81に及ばずとも、決勝の5メートル58は2位とは31センチ差。雨で滑る足元の影響も、3週間前に負傷した右足甲の痛みも苦にせず、初の頂点をつかんだ。
輝いたのは何も、フィールドだけではない。走り幅跳び決勝の約2時間後、その姿は100メートル決勝のトラックにあった。「スタートに立った瞬間に足の痛みが引いた」という東は、12秒83で堂々の4位。「まだタイムは縮められる」と言うのだから、伸びしろは計り知れない。
力強さとしなやかさにはルーツがある。4歳から6年間、バレエを習っていた。「外で走り回るのが大好きだった」という少女は小学4年で陸上に転身。「スムーズに跳べるのはバレエのおかげ」と言う柔軟な体に脚力を付け加え、もはや県内に敵なしのアスリートへと成長を遂げた。
昨年の全国中学大会(全中)は、本職の走り幅跳びで3位。頂点を射程圏に捉えたその瞳は、6年後の大舞台にも向けられている。「五輪が東京でやるなんて本当にラッキー。出場して活躍もしたい」。14歳の秘めた力は不可能を感じさせない。
【神奈川新聞】