世界ボクシング評議会(WBC)ダブルタイトルマッチ(6日・大田区総合体育館)の調印式と記者会見が4日、東京都内で行われ、日本選手最速となるプロ6戦目での世界王座を狙うライトフライ級4位の20歳、井上尚弥(大橋)は「何が何でも勝つ」と語った。
減量は「今回が一番きつかった」という。初の世界戦に緊張感を漂わせながらも「必ず記録をつくる」と鋭いまなざしだった。
5度目の防衛を目指す王者のアドリアン・エルナンデス(メキシコ)は「井上は強敵だ。全力で試合に臨む」と闘志を示した。
3度目の防衛が懸かるフライ級チャンピオンの31歳、八重樫東(大橋)は落ち着いた表情。「自分のボクシングの底上げをやってきた。何度目かの防衛は関係ない。一戦一戦しっかりやるだけ」と話した。挑戦者で同級8位のオディロン・サレタ(メキシコ)は「八重樫はスピードがあってパワフル。興味深い試合になる。ベルトを持って帰る」と意気込んだ。
◆臆せず最難関の闘いへ
日本選手最速へ、井上は静かに闘志を燃やしている。「必ずチャンピオンになって歴史的な日にする」。その眼光は鋭い。
拳を合わせるのは、4度ベルトを守っている王者エルナンデス。「接近戦に強いイメージがあるが、必ず勝たなければならない。流れの中でチャンスがあれば(KOを)狙いたい」。自信はあれど、怪物と呼ばれる若武者の鼻は、これまでとは異なる危険なにおいを嗅ぎ取っている。
「今までは映像を見て自分との差を感じられたが今回は違う。レベルの差はないし、やられるイメージもある」。警戒心を強め、自分が目指す頂の高さと向き合う。
難敵は目の前の相手だけではない。伸び盛りの二十歳は厳しい減量とも闘っている。
2年前のデビュー時に比べ、筋肉は一回りもがっしりした。ただ「正直、ライトフライ級で長く続けるのはきつい」と漏らす。「焼き肉を思いっきり食べても56キロに届かなかったが、今は節制して57キロ。デビュー時は1週間前から入った減量も3週間かけている。つけた筋肉もそぎ落としている感じ」とも語った。
同級のリミットは108ポンド(約49キロ)。8キロ近く体重を落とすため、父真吾さん(42)手作りのサムゲタンとフルーツのみという1日1食の生活を送る。計量を5日に控えた表情はさすがに苦しげだ。
間違いなく、これまでのボクシング人生で最難関の闘い。それでも臆してはいない。井上は少し笑みを浮かべながら言ってのけた。
「プロになって初めての感覚。不安もある。だからこそ、わくわくもする」。日本ボクシング界の歴史に、その名を刻む闘いのゴングが6日夜、鳴る。
【神奈川新聞】