17日間にわたり熱戦が繰り広げられたソチ冬季五輪が幕を閉じた。懸念されたテロなどは起きず、雪と氷のスポーツの祭典が無事に終わり、選手だけでなく開催国ロシアの関係者も安(あん)堵(ど)していることだろう。
大会前にテロ事件が頻発し、厳戒態勢が敷かれるものものしい雰囲気の中で、史上最多の88カ国・地域から約2900選手が参加。規模から見ても歴史的となった大会では、スキージャンプ女子などの新種目を含め7競技、98種目が行われた。
日本選手団も躍動した。1998年長野五輪の10個に次ぐ歴代2位、海外では最多となる8個(金1、銀4、銅3)のメダルを獲得した。
ともに2位のスノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢(15)とスキージャンプ男子ラージヒルの葛西紀明(41)の両選手は、日本の冬季五輪メダリストの最年少、最年長記録を塗り替える偉業を達成した。
カーリング女子では結婚、出産を経た中心選手の奮闘で入賞し、スノーボード女子では竹内智香選手が銀メダルを獲得。男女を問わず幅広い世代が活躍した。
中でも悲願のメダルを手にした葛西選手の執念には驚かされた。東日本大震災で被災しながらも金メダルに輝いた羽生結弦選手の強い精神力は見る者を熱くした。
勝者と敗者、歓喜と落胆。4年に1度という「一瞬の舞台」だからこそ、落差が目を引く。大会前のワールドカップで今季13戦10勝と好調だったスキージャンプ女子の高梨沙羅選手は、過度な期待が重圧となり表彰台を逃した。
スキーモーグル女子の上村愛子、フィギュアスケート女子の浅田真央の両選手は、メダルに届かなかったが、納得の演技や滑りによって笑顔で終えた姿が印象的だった。
好成績を収めた日本選手団。しかし、メダルの数に一喜一憂してはならない。スピードスケートはメダルなしに終わった。強化を続けてきたスキーノルディック複合は実に20年ぶり、ジャンプでは16年ぶりのメダルである。強化策が一朝一夕には実らないことの証しと言える。
それほど注目度の高くない冬季スポーツは、実業団や個人単位での活動が中心だ。だからこそ官民を挙げた息の長い強化策が欠かせない。4年後の韓国・平昌(ピョンチャン)大会へ。ソチでの興奮が残る今こそ、真剣に議論すべき時である。
【神奈川新聞】