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ソチで輝け! 神奈川ゆかりの選手(1)ボブスレー・黒岩俊喜〈上〉

スポーツ | 神奈川新聞 | 2014年1月22日(水) 23:57

競技歴わずか2年弱で五輪代表の座をつかんだ黒岩=昨年12月22日の全日本選手権、長野市(仙台大提供)
競技歴わずか2年弱で五輪代表の座をつかんだ黒岩=昨年12月22日の全日本選手権、長野市(仙台大提供)

◇氷上疾走する「彗星」

開幕まで約2週間に迫ったソチ冬季五輪。4年に1度の大舞台に神奈川ゆかりの3選手も挑む。ボブスレーの黒岩俊喜(20)=仙台大=、スピードスケート・ショートトラックの坂下里士(24)=トヨタ自動車=、フリースタイルスキー・ハーフパイプの三星マナミ(30)=野沢温泉スキークラブ。飛躍を期す精鋭たちを順次紹介する。

靴底にちりばめられた無数のスパイクで氷をかみ、そりを押す。距離にして20~30メートル。コース全長(1300~1500メートル)に比べれば、わずかな距離だが、ここでのスタートダッシュの成否が勝敗に結びつく。

「氷上のF1」と例えられ、最速140キロ超で疾走するボブスレー。短い距離に持てる力を全て爆発させ、250キロ以上もの物体をスピードに乗せるブレーカーというポジションは、この競技の動力とも言える。

そんな重要な役目を担うのが、4人乗りのブレーカーの黒岩だ。「五輪は世界が注目する大会。わくわくとした気持ちが強い」。仙台大ボブスレー部で競技を始めて2年弱。瞬く間に代表まで駆け上がった彗星には、国内最速のエンジンとしての期待がかかる。

□短距離に自信

もともと金沢中と橘高では陸上の短距離種目に汗を流していた。100メートルの最速タイムは高校2年時に記録した10秒77。目立った成績はなかったが、短い距離には何より自信があった。

「30メートルのダッシュは高校時代から自分でも能力があると思っていた。低いところで足を回転させる走り方だったから、ボブスレーは自分の強みを生かすことができると思った」。とはいえ、素質だけでジャパンのユニホームをまとえるほど甘い世界ではなかった。

仙台大に入学した頃の体重は75キロ。172センチの身長からみて恵まれた体格のようにも思えるが、海外の選手と比較すればもちろん、日本人選手の中でも、黒岩はひときわ小さかった。

総重量が重ければ重いほど、加速がついて有利になるボブスレー。そのため、4人乗りならば乗員を入れて630キロの上限が設けられている。海外勢は100キロ近い選手が並び、対して日本人は重りを載せて630キロにせざるを得ない。

相対的に海外勢は押すそりの重さが軽くなるのに対し、軽量の日本人は重いそりを押すことになる。「スタートの0・1秒の差がフィニッシュでは倍以上になる」。小柄というハンディがあるブレーカーの試行錯誤が始まった。

□ハンディ克服

1日の食事量の目安は、成人男性に必要とされる量の倍にあたる5千キロカロリー。3食プラス軽食も入れながら増量に取り組んだ。ただ、トラックで培った瞬発力は落とせない。

そこで筋肉を維持しながら体重を増やそうとウエートトレーニングにも力を入れた。バーベルを担いでスクワットしながら一気に力を解放する。ボブスレーで活用できる筋肉を鍛え上げた。

入学時は140キロが精いっぱいだったが、今では180キロを挙げる。プールでのトレーニングなどで体幹強化にも取り組んだ。

体重は86キロまで増加。国内外でのレースで実績を重ね、代表の座を射止めた。ことし1月にはノースアメリカカップ第8戦で優勝。国際大会で日本の躍進に貢献し、ソチへの切符にたどり着いた。

「最初はプレッシャーに押しつぶされるような気分だったけど、今は楽しめるようになった」。日々の研さんで夢の舞台に立つ資格を得た若きホープ。その原点は高校時代の恩師のひと言にある。

●くろいわ・としき

金沢中-橘高-仙台大2年。中、高時代は陸上短距離選手として活躍。100メートルの最速タイムは10秒77。米・レークプラシッドで行われたノースアメリカカップ第8戦4人乗りで優勝。172センチ、86キロ。横浜市金沢区出身。20歳。

◆ボブスレー

1924年の第1回シャモニー冬季五輪から実施されている競技。強化プラスチック製のそりで氷のコースを滑る。五輪では男子2人乗り、4人乗りと女子2人乗りが行われる。「氷上のF1」とも称されるように、最高時速は140キロにも達する。最前部に乗り込むパイロットが、そりの下に取り付けられたランナー(エッジ)に直結するハンドルを操作しながら進む。後ろに乗るブレーカーとともに、そりを押すスタート時の加速が勝負を大きく左右する。

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