
「頂点に立ちたい」。横浜Mの若き才能が思いを右足に凝縮させた。0-0の前半17分。ゴール正面でパスを受けると、MF斎藤はダイレクトで右足を振り抜く。ゴール左隅のネットを豪快に揺らし、決勝点となる先制弾に右拳を突き上げた。
「調子は良くなかったけど、チームを助けることができた」という背番号11には優勝、ゴールに期するものがあった。小学校時代からトリコロールをまとって戦ってきた23歳の胸には、日の丸を背負うまでに育ててくれたクラブへの愛がある。トップチーム在籍5年目での初タイトルに「お世話になった育成担当の人に見せられたことがうれしい」と笑う。
そして「ずっと支えてくれた人」に届けたかった栄冠でもある。昨年12月に77歳で祖母が他界。両親が共働きで、学校帰りはいつも、実家近くの祖母の家にランドセルを置いて遊ぶおばあちゃん子だった。リーグ制覇を逃し、「天皇杯でいい報告がしたい」と決意し、臨んでいたという。
将来的には欧州挑戦を視野に入れる。「(来季のことは)まだ分からない」と言うが、その目はどこでプレーしようともより高みに向けられている。「もっと上を目指す。マリノスはまだまだ強くなれる」。リーグ王座奪還に、この存在は欠かせない。
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