
第73回国民体育大会「福井しあわせ元気国体2018」第5日は3日、越前市AW-Iスポーツアリーナなどで行われ、神奈川勢はレスリングの成年男子グレコローマン72キロ級で、リオデジャネイロ五輪代表の井上智裕が優勝を果たした。少年男子同92キロ級の佐川健は準優勝に輝いた。
世界選手権でメダルを
幕末の天才と呼ばれた福井藩士・橋本左内はこう説いたという。
「激流に耐えうる柱のように揺るぎない信念を心に持て」
レスリングの成年男子グレコローマン72キロ級決勝、第2ピリオド残り1分12秒。井上(富士工業)が渾身(こんしん)のスープレックスを決めて9-8とし、ついに逆転した。
第1ピリオドに投げ技で連続ポイントを奪われるなど、ひやりとさせられた展開に井上は「結果が全てなので勝ったことはいいことだけど、世界で勝つためにはあの試合では1回戦も勝てない」と厳しく振り返った。
リオデジャネイロ五輪は5位入賞も不完全燃焼だった31歳は、東京五輪を目指し鍛錬を続ける。今月下旬にハンガリーで行われる世界選手権に初出場し、その後は五輪に合わせて階級を上げるか、下げるかという選択の時も迫ってきている。
国体は前所属の兵庫も合わせ3連覇の偉業を遂げたものの「(内容的に)やっぱり喜べないですね」と井上。足元を冷静に見つめるリアリストが見据えるのはもっと先だ。まずは世界選手権で「金メダルを目指し、最低でもメダルを取りたい」と力を込める。五輪代表争いという名の激流はこれからやってくる。

佐川、悔しい銀 「力は出し切れた」
試合終了の瞬間、佐川(磯子工高)は天を仰いだ。少年男子グレコローマン92キロ級決勝を1-4で落とし、「無駄にポイントを取られた場面が多く、それが敗北につながった」と悔しがった。
0-2の第2ピリオド開始直後。前進して圧力をかけたがいなされ、場外ポイントを奪われた。「あれがなければ、気持ち的にもっと余裕を持っていけた」と振り返る。
8月の全国高校生グレコローマン選手権も決勝で敗れており「きょうもそうだけど緊張してしまった。まだメンタルが弱い」。しきりに反省の弁を繰り返したが、自分の弱点を冷静に見つめる強さがある。
中学時代は柔道部だったが「面白そう」と高校からレスリングを始め、経験の少なさをものともせずに頭角を現した。国体も昨年の3位から順位を上げ、成長を示した。
高校時代に果たせなかった全国優勝を大学で目指す佐川は「悔いはあるけれど、力は出し切れた。これからの大学4年間が楽しみ」と締めくくった。自分の可能性を信じて進む。