
30歳のベテランの走りにメダルへの期待は懸かっていた。リオデジャネイロパラリンピックの男子400メートルリレー。メダルへの鍵は多川の配置転換にあった。
直前8月の北海道合宿がターニングポイントだった。チーム一の俊足を誇る多川を第1走者から第3走者に回す。脚力を生かし、幅跳びが専門の芦田と、障害クラスが重いアンカー山本の負担を減らす策だ。
だが、「第3走者はやったことがなかった。不安だった」。過去には例がないというほど練習を繰り返した。「ベストタイムが出るのか…」。米国合宿を経てリオデジャネイロに入った後も懸念は付きまとった。それでも練習は裏切らない。「いつも通りやれれば結果は付いてくる」。最後は自信が勝った。
果たして芦田、佐藤と上々の位置でつながった。待ち受ける多川は懸命に足を回し、山本が4番手でゴール。米国の失格を受けて繰り上がり表彰台に駆け上がった。
2012年のロンドン大会では4位。