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桐蔭学園7-12大阪桐蔭
桐蔭決勝ならず 全国高校ラグビー

スポーツ | 神奈川新聞 | 2018年1月6日(土) 02:00

3位表彰を受ける桐蔭学園の選手ら
3位表彰を受ける桐蔭学園の選手ら

 第97回全国高校ラグビー大会第6日は5日、東大阪市の花園ラグビー場で準決勝2試合が行われ、神奈川代表の桐蔭学園は大阪桐蔭(大阪第1)に7-12で競り負け、2大会ぶりの決勝進出はならなかった。

 桐蔭学園は序盤から大阪桐蔭の力強いディフェンスに苦しんだ。前半8分に続き後半2分にもトライを献上。0-12の同24分にプロップ細木康太郎(3年)がゴール直前の混戦から持ち出してトライを決めたが、あと一歩及ばなかった。


プロップ細木が一矢


 桐蔭学園が誇る大会屈指のプロップ細木が一矢報いた。0-12の後半24分、相手ゴール前の密集から106キロの体で相手守備網を突破。出場2試合で4本目のトライにも「自分が決めたことはどうでもいい」と笑顔はなかった。

 「100回くらいコンタクトした。こんなに多いのは初めて」。その原動力は1年前の藤原監督の言葉だった。「どれだけコンタクトしても(OBの)堀越はボールをもらい続けたぞ」。4歳年上の先輩と同じ帝京大に進学予定の有望株は「堀越さんに近づきたい」との思いをプレーで体現した。


ペース築けなかった


 桐蔭学園・藤原秀之監督の話 相手のディフェンスの圧力を受けてしまった。キックで陣地を稼ぐゲームプランもうまくいかず、ペースを築けなかった。選手たちにはよく頑張ったと伝えたい。


ミスが大きく響いた


 桐蔭学園・原田衛主将の話 FW勝負にこだわったのに取り切れなかった責任を感じる。相手のプレッシャーにひるみ、自分たちのラグビーを発揮できなかった。ミスが大きく響いてしまった。

懸命のつなぎ あと一歩


 最後は相手ゴールラインの目の前まで迫ったが、同点のトライは遠かった。反則の笛に続くノーサイドの幕切れに、桐蔭学園の選手は聖地に崩れ落ちた。

 7-12の後半30分、自陣22メートル左で相手ラインアウトをマイボールにしてから、およそ8分間もひたむきににつないだ。「絶対にボールを落とさない。この1年、礎をテーマに戦ってきたんだから」と、司令塔で副主将のSO田村が懸命にタクトを振る。チーム一体の攻撃は65フェーズを数えたが、インゴールまで運ぶことはできなかった。

 大阪桐蔭の複数人で迫り来るタックルを浴び、序盤から攻撃のテンポが出ない。主将のフッカー原田は「分かっていたのに向こうのFWに押された」。雨でボールが滑り、キックでの陣地獲得を試みるも攻撃を継続できない。力強いゲインを繰り返したCTB竹下も「1対1のタックルが強かった。ワイドに展開することも恐れてしまった」という。

 初戦から見せてきたFWで接点を制し、バックスで展開するパターンを見失ったような敗戦に、「精いっぱい戦えたけれど、自ら苦しんでしまった」と藤原秀之監督(49)は唇をかんだ。

 主力の多くは2年前の準優勝をグラウンドや観客席で経験してきたからこそ、悲願の単独優勝への思いは強かった。「これからも桐蔭の強みは変わらない。継承していってほしい」と田村。頬を伝わる涙を拭いながら、夢の続きとブルーのジャージーを後輩に託した。



【桐蔭学園-大阪桐蔭】後半ロスタイムに激しい攻撃を繰り広げる桐蔭学園の選手ら =花園ラグビー場
【桐蔭学園-大阪桐蔭】後半ロスタイムに激しい攻撃を繰り広げる桐蔭学園の選手ら =花園ラグビー場

主将原田 最後まで仲間鼓舞


 0-7で迎えたハーフタイム。「最後までFWでいくぞ」。桐蔭学園の主将・フッカー原田はフィフティーンをそう奮い立たせたが、最後まで劣勢を挽回することはできなかった。

 大阪桐蔭ディフェンスの鋭い出足に、伝統のパスが断ち切られる苦しい戦い。「下を向くな」「悔いなくやろう」。珍しいミスを重ねる仲間を鼓舞したが、あと一歩届かなかった。7-12。ノーサイドの笛が鳴った瞬間は「目の前、頭の中が真っ白になった」。コートでむせび泣いた。

 「花園で優勝することが夢だった」。兵庫・伊丹でラグビーを始めた。文武両道を求め、競技が盛んな関西を飛び出して桐蔭学園中に入学。高校では全国大会で1年時に準優勝、前回は4強入り。申し分ない経験の分だけ「勝たなきゃいけない。重圧がどんどん大きくなった」という。

 初優勝した昨春の全国選抜大会はけがで欠場し、「今度は自分が引っ張る」と臨んだ3度目の舞台だった。父は兵庫から住まいを横浜に移し、生活を支えてくれた。「続けられたのも両親のおかげ」と、優勝で恩返しするつもりだった。

 競技を続けるかどうかは今後の進路次第という。チームメートが推薦入試で進路を決める中、8日後の大学入試センター試験で高みを狙う。「簡単ではないところを目指します」。新たな夢も全力で追う。


桐蔭学園フィフティーンを見守るメンタルコーチの布施努さん =大阪府東大阪市の花園ラグビー場
桐蔭学園フィフティーンを見守るメンタルコーチの布施努さん =大阪府東大阪市の花園ラグビー場

さあ次の舞台へ
メンタルコーチ 布施さん


 5日の全国高校ラグビー大会準決勝で、桐蔭学園は大阪桐蔭に競り負けて2大会ぶりの決勝進出を逃した。ノーサイドの笛が鳴るまで伝統の「継続ラグビー」を貫いた選手たちを、メンタルコーチの布施努さん(54)は「最後まで自分たちのプレーを信じ、諦めずに戦ったことに拍手を送りたい」とたたえた。

 7-12で迎えたノータイム。桐蔭は約8分間にわたる連続攻撃を仕掛けた。逆転こそならなかったが、スタンドで見守った布施さんは「苦しいときこそ自分の役割を自覚し、プレーできる選手が強い」と、粘り強い戦いぶりに選手の成長を見ていた。

 花園出場を逃した3大会前、藤原秀之監督(49)からチームの活性化を託された。「日本一になるため、選手の自主性を高めてほしい」。社会人野球のJX-ENEOSと掛け持つ形で月1回指導。遠征にも帯同し、「ミーティングや試合中、自分の考えをチーム全体にうまく伝える方法を身に付けさせた」。3大会連続の準決勝進出に、成果は表れた。

 自身は東京・早実高2年の1980年、夏の甲子園決勝で愛甲猛投手らを擁する横浜高と対戦し準優勝。慶大では日本一にも貢献した元球児だ。卒業後は住友商事で14年間、新規事業の立ち上げなどに携わったが、「野球の経験を生かして、結果を残すチームをつくりたい」と一念発起し退社。米国の大学院でスポーツ心理学の博士号を取得した。

 7年前から横浜ラグビースクールでも指導する。当時からの教え子の副主将・SO田村魁世選手(3年)は「チームと個人で目標を明確にできた」と言い、プロップ細木康太郎選手(3年)も「人のためにプレーする意識が身に付いた」と語る。

 布施さんは、志半ばで花園を去る桐蔭フィフティーンにこんなエールを送るつもりだ。「桐蔭で学んだことを生かして次の舞台でもいいチームをつくり、君たちが日本のラグビー界をけん引してほしい」

 
 

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