6区館沢 持ち味存分 魂の走り
標高差864メートルを駆け下る国内随一の中距離ランナーを想像できるだろうか。首位と3分22秒差で芦ノ湖をスタートした東海大の6区は館沢だ。
復路当日のエントリー変更で投入されたエースは「下りが得意な選手と真っ向勝負してもかなわない。得意な上りとラストの平地で勝負」と、初の山下りにも前半から突っ込んだ。小田原中継所へ倒れそうになりながら飛び込み、青学大との差を1分1秒縮める57分17秒の区間新記録を打ち立てた。
昨年8月初旬に右太もも裏の大けがが発覚し、休養を経て本格的に戦線復帰したのは同11月。この日も痛みはあったが「攻めなければ話にならない。脚がぶっ壊れてもいい」。下りの勾配を利用してスピードに乗っていく発想より、重量級エンジンを駆って上り坂で他と違いを生む新たな6区の走り方を示した。
2017年、18年の日本選手権1500メートルを連覇した逸材は中距離に軸足を置いており、体つきから異なる長距離レースへ調整するのは容易でない。春からはランニングクラブのDeNAで中距離に専念するため、駅伝はこれが最後という。
昨季は故障で東京五輪から遠ざかったかに見えたが、「諦める必要はない。焦らずやっていきたい」と五輪選考を兼ねた6月の日本選手権に照準を合わせる。底知れぬラストランは可能性を感じさせるに十分だった。