
日本女子卓球界の名指導者として、福原愛や石川佳純らを育てたサンリツ監督の近藤欽司氏(75)と、高校野球界を長年引っ張ってきた横浜高校野球部前監督の渡辺元智氏(72)。同じ時代を生きてきた2人が、望まれる指導者像や2020年東京五輪で活躍が期待される選手たちなどについて語り合った。
渡辺 日本の卓球選手の活躍が世界で目立っています、要因は何ですか。
近藤 「打倒中国」を目標に、まず心掛けたのが小学生の全国大会です。2学年刻みで全国大会を約20年前から実施しました。これで素質のある子どもたちが早い時期に卓球に慣れ親しむようになりました。あとは全国の優秀な選手を東京に集めてそこで英才教育をしようというエリートアカデミーを2008年に発足しました。私はコーチを5年間しましたが、平野美宇なんかはそこで育ちました。近くの学校に通いながら、そこで寝泊まりして練習をする。ナショナルチームの選手も一緒に合宿するので非常に身近に優秀な福原愛や石川佳純と一緒に練習できるわけです。
渡辺 監督は小学生の全国大会にはどのように関わったのですか。
近藤 エリートアカデミーのコーチとして大会を視察し、将来の素質のある選手を探していた。そこで平野選手なんかは将来性があるなと思い、親にも会いに行きました。
渡辺 やはり裾野から始めたのが良かったのではないでしょうか。
近藤 やはり卓球を取り巻くいろいろな人たちの協力があって、組織ができてきたのですね。
渡辺 先生は失敗から学ぶことの大切さを知って、そこからどんどん改革をしていったようですね。最初の頃、おごりもあったといいますが、そこから15年も優勝できなかった。
近藤 指導者になったのは23歳でした。4年目でインターハイの団体で初優勝した。ところが、その後はやってもやっても勝てませんでした。渡辺前監督も甲子園の常連で、何よりもプロ野球で活躍している選手を数多く輩出しているのが素晴らしい。いまプロ野球で活躍している選手たちを発掘したときに、「将来有望だな」と何かひらめきみたいなのはあったのですか。
渡辺 やはり子どもなりにありますね。何か子どもなりにオーラを感じる。
近藤 その人材を見つけ、さらにしっかり指導するというのがまず大変ですね。
渡辺 プロに行くとか、全国優勝する子はそれなりに光るものがあります。近藤監督がまず体験させて、それから指導するというのは私と同じで、私もまず見るのです。私がいいと思っても、最初は本人を見ていて、そこからアドバイスします。