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さっそうと、クールに スケートボード・藤沢虹々可(上)

スポーツ | 神奈川新聞 | 2019年4月5日(金) 20:30

藤沢虹々可さん
藤沢虹々可さん

 東京五輪から新たに正式競技となるスケートボード。2月に行われた、日本代表選考を兼ねた日本オープン・ストリート選手権女子は相模原市出身の藤沢虹々可(ACT SB)が制覇した。これから激化する選考争いを「ワクワクする」と言う17歳の新星。クールに、さっそうと自分が信じる道を切り開く。

 国内初開催となった日本オープンで頂点を極めた藤沢。初代女王は表彰式直後、はやる気持ちを抑えてスマートフォンを握り締め、母・可奈子の携帯を鳴らした。

 優勝を報告すると母の声は震えていた。「おめでとう。良かったね…」。親子ともども、これまでの長く、険しい歩みが報われた瞬間だった。

 藤沢が取り組む五輪種目の「ストリート」は、街中にある手すりや段差といった構造物を模した複数のセクションを使って技(トリック)の完成度を競う。

 日本オープンの予選ラウンドで藤沢は「この大会で勝つために練習してきた」という、縁石の角を利用して板を横滑りさせる「フロントサイド・テールスライド」に失敗。しかし、決勝でも同じ技に果敢に挑戦して1本目で高得点をたたき出し、一発勝負の「ベストトリック」では180度の回転を入れた高難度「フロントサイド・スミス・グラインド180アウト」を決めた。

 「2、3年前の日本選手権では選手がそろわず、決勝しかやっていなかった」(藤沢)と振り返るこの競技も、近年は若手を中心にレベルが底上げされてきている。今大会は5月の日本選手権とともに、日本ローラースポーツ連盟の強化指定選手の選考も兼ねていた。日本代表入りし、海外遠征などの経験を積んでいくことで東京五輪代表選考会に向けさらに一皮むける。その大事な「権利」をつかむための第一関門で、藤沢は頭一つ抜け出したわけだ。

 自らの可能性を広げる価値あるタイトルに「初めて全日本と名が付く大会で優勝できた。今までは『あの技が決められなかった。表彰台に上れなかった』とか、いつもどこかで悔しさが残っていた。今までやってきてよかったなって」。

 相模原生まれの相模原育ちで、同市中央区の「小山公園スケートパーク」を拠点に鍛錬を続けてきた。昨年の日本選手権・ストリート女子を制し、同じく五輪出場を志す相模女子高2年の伊佐風椰(ミキハウス)も技を磨いてきた場所だ。スケートボードのほか、自転車のBMXやダンスなどに興じる若者であふれる、県北エリアのストリートスポーツの聖地ともいえる。

 幼稚園も同じという盟友に、藤沢は「風椰と一緒にいるとずっと笑っていられるし、今も仲良し。女子選手は多くないし、真剣にやっている人も少ないので、そんな(実力者の)人が近くにいてくれて幸せだと思っています」とほほ笑む。

 6歳の頃、サーフィンの練習の一環でスケートボードも愛好していた父・兼二に連れられ同パークを訪れた。父が滑っている姿を見ているうちに興味を持った。「私は飽き性だったので、両親も続くとは思っていなかったみたい」というが、少女は「楽しい、楽しい」と未知のスポーツにのめり込んでいった。

 現在は通信制の厚木清南高に通う。午前中は飲食店でアルバイトし、午後から練習に没頭する。藤沢の下には2歳と1歳の弟がおり、アルバイトのない日は「お母さんが大変なので」と、弟たちの面倒も欠かさない。「給料は全部貯金して遠征の旅費に充てています。何か欲しいとかあまり思わないのでつらくはないですね」。表情はあどけないが、確かなビジョンを持ったしっかり者でもある。

 スケートボードの育成環境は独特だ。野球やサッカーのように、チームの指導者から教えを受けるスタイルと異なり、独学で体得していくことが主流だ。上級者の滑りを見よう見まねでチャレンジしながら自分の体に染み込ませていく。藤沢も伊佐もそうしてスキルを磨いてきたのだ。

 右も左も分からない小学生時代は、未経験者の母が「先生」でもあった。可奈子は娘と一緒に通ううちに周囲の上級ライダーの練習を手本に「お兄さんがこうやっているのだから、あなたもやってみなさい」と助言を繰り返した。

 真冬の極寒の中でも、2人の練習は続いた。そうした苦労も乗り越え、キャリア10年余で「日本一」の称号を手に入れた心優しい若き女王。歩んできた道は間違いではなかった。 =敬称略

「楽しむことが一番」 スケートボード・藤沢虹々可(下)

ふじさわ・ななか スケートボーダー。厚木清南高2年、ACT SB所属。父の影響で6歳から競技開始。2017年11月に米カリフォルニア州で行われた「EXPOSURE2017」で優勝し、昨年は世界最高峰の「Xゲーム」にも参戦。東京五輪に向けた強化指定選手の選考を兼ねた2月の日本オープン・ストリート選手権で初優勝。相模原市緑区出身。17歳。




 連載「THE REAL」では、東京五輪・パラリンピックを目指す神奈川ゆかりのアスリートに「リアル」に迫ります(随時掲載)。

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