
7日に閉幕した全国高校ラグビー大会。桐蔭学園は悲願の単独優勝に届かなかったが、強敵続きの厳しいトーナメントを勝ち上がって「東の横綱」の力を示した。準決勝では優勝6度の宿敵・東福岡から歴史的な花園初勝利。一進一退の攻防を制した陰には、同じ関東勢の心温まるバックアップがあった。
熱気がほとばしる花園ラグビー場のロッカールーム前。桐蔭フィフティーンが5日の準決勝のピッチへ向かう、その時だった。
「桐蔭の心、魂に響かせろこの歌。勝利を信じ、共に進もう誇りを胸に~」。嗚咽(おえつ)混じりのエールが背中を押す。声の主は流通経大柏(千葉)の選手だった。
前の試合で大阪桐蔭(大阪第1)に敗れたばかり。悔し涙で顔をくしゃくしゃにしながら花道を作り、応援歌を歌ってくれたのだ。試合前に桐蔭学園の選手が激励してくれたことへの“返礼”だった。
「泣きながら並んで僕らの応援してくれて…。ぐっときて頑張らないとって思いを強くした」と主将SH小西。藤原秀之監督(51)も「ラグビー人生で初めて。感動してウルっときたし、力になった」と感謝する。

関東勢2校が4強に残ったのは6大会ぶり。2000年度以降の高校ラグビー界は「西高東低」が顕著で、過去20大会で関西勢と東福岡以外で頂点に立ったのは、両校優勝した10年度の桐蔭だけ。単独制覇の夢は、東日本の高校の悲願でもある。
とりわけ、藤原監督と流通経大柏・相亮太監督(37)は母校・大東大一(東京)の先輩、後輩という間柄。毎年のように関東大会などでしのぎを削っており、花園の舞台では「盟友」ともいえる存在だ。
大きな声援も力に変え、桐蔭は過去に1分け3敗だった東福岡を46-38で下した。「敗れたチームの思いも背負うというたくましさが成長の証し。ノーサイドの精神を持つラグビーだからこそ生まれた」(藤原監督)という絆のドラマはこれからも語り継がれていくだろう。