引き分けでも来季のACL出場が絶望的となるクラブの危機に、自らの記念ゴールをささげた。「みんなが待っていてくれたし、本当に幸せに思う」とジュニーニョ。史上8人目の通算100得点達成の瞬間は、同点の後半39分に訪れた。
脇目も振らず、水色で埋まる観客席へ。両手にはなぜか、サポーターから贈られたという横断幕を握り締めている。「決める自信があったから、隠しておいたんだ」。後半開始前、あらかじめ相手ゴール脇に小さく折り畳んで忍ばせておく、粋な演出だった。
3日前の天皇杯で古傷の左ふくらはぎ痛が悪化。それでも「今季はずっと痛みが抜けないと言われていたし、痛み以上に自分の気持ちが高ぶっていた」。今季の無冠が確定しても、33歳のベテランが気持ちを切らすことはなかった。
ブラジル時代のチャンスメーカーは来日8年、川崎で点取り屋へ。100あるゴールシーンの中でも1得点目を忘れない。「すべては、あの時から始まった」。2005年3月の柏戦、終了間際に追い付いてJ1復帰後初の勝ち点1。強豪の看板が揺らぐいま、あらためてその原点に思いをはせる。
172試合での達成は元日本代表FW三浦知良(176試合)らを抜いて、歴代2位のスピード記録でもある。「(2人の)子どもからは『1千得点まで決めるんでしょ』と言われるけど、ちょっと難しいかな。自分はペレじゃないんだから」。そんな陽気なストライカーに、いつも川崎は救われてきた。
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