バスケットボール男子のBリーグのプレーオフ、チャンピオンシップ(CS)は27日、東京・国立代々木競技場で一発勝負の決勝が行われ、東地区1位の栃木がリーグ最高勝率で中地区1位の川崎に85-79で勝ち、初代王者となった。最優秀選手(MVP)には3点シュート3本を含む21得点と活躍した古川が選ばれた。
試合は終盤まで一進一退の攻防で進んだ。司令塔の田臥を起点としたパスで組み立てた栃木が残り3分余りで先行し、競り勝った。昨季の旧ナショナルリーグ(NBL)覇者の川崎は、レギュラーシーズン得点王のファジーカスがチーム最多の23得点をマークしたが、一歩及ばなかった。
BリーグはNBLとTKbjリーグの統合で誕生。昨年9月から1部(B1)は18チームがレギュラーシーズン各60試合を戦い、上位8チームがトーナメントのチャンピオンシップで王座を争った。
勝敗分けた精度の差
今季、見ることがなかった光景だった。試合終了のブザーが鳴り響いた瞬間、川崎の選手たちがぼうぜんと天を仰いだ。
4点リードで迎えた最終クオーター。残り1分30秒まで競り合いが続いた。79-80。篠山のパスを空中で受けたスパングラーが、直接ゴールにたたき込む「アリウープ」を試みたが、リングに嫌われた。残り1分。再び篠山がゴールへ走るスパングラーへ出したパスは高く浮いてコートの外へ。勝負ありだった。
永遠に刻まれる「初代王者」。チームが掲げてきた目標は一つだけだった。北卓也監督(44)は「最後の最後まで分からなかったが、一つのプレーの精度で勝敗が分かれた」と栃木との差をそう表現した。
レギュラーシーズンの勝率はリーグ18チームで最高の8割1分7厘で臨んだチャンピオンシップ。激しいマークに遭いながら23得点のファジーカスも「ノーマークの場面もあったが、そこでシュートを決められなかった」と肩を落とし、優勝を逃した指揮官は「いい試合をして負けてしまったのは私の責任」と表情をゆがめた。
ただ、この日は超満員の1万144人が押し寄せ、人数では栃木側に押され気味だったが、ファンの熱い川崎コールがいつまでも鳴り響いた。「Bリーグ、そして川崎を盛り上げるために選手たちは最後まで一生懸命やってくれた。お疲れさま、ありがとうと言いたい」と北監督。次のステージへ、川崎は必ず立ち上がる。
エース辻 満身創痍
終盤に失速
満身創痍(そうい)のエース辻の個人技で、川崎は第3クオーターにはリードを奪った。その存在感が光ったのは42-45の残り8分の場面。右サイドから中央をえぐる。引きつけた相手ディフェンスとの間合いを、後方にジャンプしながら引き離し、シュートを決めた。
だが、日本を代表する希代のシューターは最終盤に輝けなかった。4点リードで迎えた第4クオーターは、8分間のプレーで無得点。逆転負けに肩を落とした。
この日は9得点。チャンピオンシップ1試合平均でも9得点にとどまった。4月に左足首を捻挫し、持病の腰痛が影響して「眠れない日もあった」ほど。走り込みもままならず。一度失った体力は、短期間で取り戻せなかった。
「この1年で終わりじゃない。前を向いて、次へ向かう」。27歳のまなざしはむしろ、一層鋭くなった。