【コラム】決定的に欠いた「一手」 /ベルマーレ
スポーツ | 神奈川新聞 | 2010年4月19日(月) 00:50
スペースに飛び出せど、ボールは出てこない。動きだす準備はできていても、リスタートは緩慢だ。両手を広げて「フリー」をアピール。直後に力なく首を振る。目についたのはチームリーダー・MF坂本の、いら立ちを隠しきれない様子ばかりだった。
「全然(相手の)プレッシャーはなかった。前を向こうと思えば向けたはずなのに」。坂本の言葉が、この日のゲームを端的に表していた。
C大阪に、昨季J2で3度の名勝負を繰り広げた「攻め」の姿勢はなかった。4バックが自陣に張り付いた守備的な相手に対し、手数と人数と時間をかけて攻めたのは湘南だった。
しかし、「勝負の一手」が決定的に欠けていた。裏へと走り込む仲間を横目に見ながら、選択されたのは「逃げ」にも映る横パスばかり。前半35分のPKは判定にも泣かされたが、5対16のシュート数が示すように、「やり切る」意識では明らかに相手が上だった。
執念のパワープレーが実って歓喜に沸いたロスタイム。その数分後に、FW香川の一発で再び地獄へと突き落とされた。ラスト5分は極上のエンターテインメント。その結末が劇的であればあるほど、際立ったのは90分間の退屈だった。
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