【コラム】「無心で」振り抜いた決勝点/ベルマーレ
スポーツ | 神奈川新聞 | 2009年11月22日(日) 00:13

後半44分。相手ゴール前。DFジャーンが競り勝ったボールは高々と舞い上がり、クロスバーをたたいて一度はため息を誘った後、吸い寄せられるように「一番(昇格への)気持ちの強い人のところ」(GK野沢)に落ちた。ミスターベルマーレ。MF坂本が「無心で」左足を振り抜いた。
揺れるゴールネット。歓喜の輪は幾重にも広がり、遠く湘南の地から駆けつけた1000人のサポーターは勢い余ってピッチへとなだれ込んだ。イエローカード9枚が飛び交う死闘の末の、悲願に王手をかける一撃。「湘南」コールが、いつまでも鳴りやまない。
しのぎを削ってきたライバルは、やはり強かった。2―0の最高のスタートを切りながら、ロングボールから次々と1対1を仕掛けてくる甲府に次第に押し込まれ、後半17分に同点となるPKを献上。その後も「耐えるしかない」(DF臼井)時間があまりに長かった。
しかし、湘南は勇気を持って再び前へと出た。決勝点はFKからだったが、「6、7割方、向こうに転がる流れの中で、前にかける人数を増やせた」(反町監督)ことが最後に道を開いた。これこそ、湘南が1年間貫いてきた方法論だった。
「トレーニングでやってきたことしか試合には出ない」と坂本。次節、ホームの草津戦で“その時”はやってくるのか。10年分の思いを込めて。「信じてやるだけ」だ。
【】