
サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で1次リーグG組を首位通過した川崎の決勝トーナメント1回戦の相手が、E組2位のムアントン(タイ)に決まった。主力のけがが相次いで開幕直後は苦しんでいた川崎だが、「我慢の戦いを続けたことが結果につながった」(鬼木監督)と徐々に本来の強さを取り戻し、過去最高のアジア4強以上も視野に入ってきた。
4月25日に敵地韓国で行われた1次リーグ第5節の水原戦。負ければ、2014年大会に続く決勝トーナメント進出が絶望的となる一戦で、川崎は底力を発揮した。
序盤は守備を固める相手に手を焼いたが、後半3分のセットプレーからDF奈良が先制ゴール。待望の初勝利を挙げて最終節に自力突破の可能性を残すと、9日のイースタン(香港)戦では今季最多4得点の快勝で締めくくった。
◇ 5年間チームを率いた風間八宏前監督がJ2名古屋に去り、絶対的エースだった元日本代表FW大久保がFC東京に移籍した2017年。新たな攻撃の核として期待された家長をはじめ、シーズン序盤から離脱者が続出する非常事態に見舞われた。
3年ぶりに挑んだACLでも初戦の水原(韓国)戦の引き分けを皮切りに、4試合連続でドロー。10年大会以来となる1次リーグ敗退の瀬戸際に立たされ、Jリーグでも波に乗りきれなかったが、転機は引き分けに終わった4月21日のJ1清水戦(等々力)だったという。
その時点で今季公式戦11戦で3ゴール以上が一度もなく、川崎らしい攻撃が影を潜めていたが、試合前に鬼木監督が「やっぱり自分たちはボールを持ってなんぼ」と熱弁を振るったことがチームを動かした。
チーム最年長の中村は「守備の意識を丹念に植え付ける中で、ピンぼけしていた。まずボールを持つところからやろう、という話を(チームで)してから選手の意識も変わった」と流れるような攻撃から2得点した清水戦を振り返り、1次リーグ首位通過に「自分たちの土台、哲学を取り戻しつつある」と声を弾ませた。
◇ 1次リーグ最終戦で大島が復帰後初のフル出場。家長も2カ月ぶりにピッチに戻り、新戦力の阿部やブラジル人FWのハイネルもチームの戦術にフィットしてきた。「苦しかった時期に、いろいろと引き出しは増えていると思う。アキ(家長)も戻ってきたし、また競争が始まるのは大きい」。中村は新たな力の台頭を歓迎する。
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1次リーグでエース小林と並ぶ2得点の奈良は「最終戦まで可能性を残せたのはイースタンと広州恒大戦で引き分けたアウェーでのしぶとさだと思う」と言い、ACLを過去2度経験したベテラン田坂は「したたかに勝ち点を取るチームになった」と変化を実感している。
アジアの強豪が待ち受ける激戦必至の決勝トーナメントは23日に初戦を迎える。「最後に追い込まれたとき、勝たなくてはいけないゲームでしっかり勝てたことは、今後のACLでプラスになってくる」と指揮官。まずは過去最高だった07、09年に並ぶアジア8強、さらにその上を目指す。
