競技人生をあきらめかけた28歳が、職場の支援でフルマラソンに初挑戦。初優勝の栄冠を勝ち取った。生井は「ホッとしたのが一番。家族や会社に恩返しできた」。笑顔に感謝と達成感があふれた。
10キロ地点を過ぎても集団。スローペースを嫌って抜け出ると、あとは独走状態だった。ゴール直前に白い歯を見せる余裕すらあった。
藤沢翔陵高出身。東海大4年時に1区を担った全日本大学駅伝で優勝、同じく箱根駅伝で準優勝している。実業団のスズキに5年間在籍したが故障や体力の衰えなどから、今年5月に一線を退く決断をした。
7月からスズキ自販湘南の藤沢営業所に配属。日曜日が勤務という仕事柄、大会出場をためらっていたが、社長が「走ってこいよ」と後押ししてくれた。午前4時に起床し、最長で40キロ走る練習を1日も休まず重ねてきた。
「あとは、おれたちがやっておくから」と送り出してくれた同僚たちは藤沢市内の沿道から声援を送り、ゴールでは10人近い役員らが待ち受けた。表彰台に立った生井は「ぜひスズキを」と呼び掛けることも忘れなかった。
「努力は裏切らないと痛感した。それが魅力でやめられない。今は仕事が第一。でも許可が出れば、来年も出場したい」。アスリートの血が再び目覚めた。
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