横浜Mが誇るリーグ屈指のドリブラーは、戴冠への熱くまっすぐな思いを右足に込めていた。
0-0の後半10分。MF斎藤は左サイドでボールを受け取ると、一気に加速した。広島のMF高萩を置き去りにしてペナルティーエリアへ侵入。寄せてきたDFも緩急でかわしたその刹那、右足を振り抜いた。
ゴール左隅に鋭いシュートが吸い込まれた。12試合ぶりの今季4点目は均衡を破る決勝弾。「受けてからの流れがすごく良かった。ようやくチームに貢献できた」。背中の背番号11を指さし、首位攻防戦に詰めかけた4万近いサポーターに歓喜の渦を巻き起こした。
日本代表の東欧遠征から17日朝に帰国したばかり。2試合で出番は一度もなかった。悔しさはもちろんある。だが、腐りはしなかった。
本田(CSKAモスクワ)ら主力とプレーし、通じた部分は確かな自信となっていた。「練習から頑張ってきた。ああいう人としっかりできた経験が生きてくる」。吸収したものをすぐに結果に表すのだから、やはり並外れた存在だ。
横浜Mが両ステージ制覇した2003年。そのピッチ横でボールボーイを務めていた。それから10年。憧れの舞台がもう近くにある。「まだまだ得点を取らないと」「マリノスは優勝しないといけない。強くないといけない」。下部組織で育ち、名門のDNAを引き継ぐ23歳の一撃で、横浜Mは首位を奪還した。
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