1点を追う後半ロスタイム。MF梶川の前線へのロングパスをDF鎌田が頭で折り返す。両軍入り交じるゴール前の混戦に、一瞬ぴたりと時が止まる。FW菊池のもとにボールがこぼれた。同点か。誰もが思った。だが無情にもボールは相手GKの胸に収まった。
前半はどちらが首位か見紛うほどだった。徹底して両サイドにロングボールを散らす「勝利至上」の大宮を相手に、らしさを全開。FW陣がプレスで相手を崩し、MFがパスカット。すぐさま前を向くFW陣へボールを集めて相手ゴールを襲う。ひと筋の川のような流れがピッチにできあがる。18分のDF大野の同点ヘッドも攻撃を貫いて得たCKから生まれた。
ロッカールームのホワイトボードに、チョウ貴裁監督が大きく書いた「2点目を取りに行く」。この言葉通り走り抜いた。疲れが見えた後半36分に勝ち越しゴールを許しても諦めない。終了の笛が鳴り響くと、GK阿部が肩を落としていたその場所は相手ペナルティーエリア内だった。
1-4で敗れた2月のプレシーズンマッチ、1-3の4月のナビスコ杯。スコアの差は1点ずつ縮まっている。両軍サポーターからイレブンへ贈られた温かい拍手が死闘の証しだ。
成長を続けているのは間違いない。だが勝ち点にはつながらず「チームに貢献できなかった自分がふがいない」と梶川。その目はうっすらと赤らんでいた。
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