川崎から世界を狙え-。「川崎新田ボクシングジム」(川崎市多摩区)所属の三好喜美佳選手(29)が先月、東洋太平洋女子バンタム級の新王者に輝いた。過去3度対戦し、一度も勝てなかった王者・東郷理代選手(37)を相手に果敢に攻め続け、2-1の判定で勝利。川崎のジムからは初となる女子王者の誕生に、「気持ちで勝った。目指すは世界」とさらなる飛躍を誓う。
念願のベルトだった。2月27日、川崎市中原区の市とどろきアリーナ。8ラウンドの壮絶な打ち合いを終え、リングアナウンサーの絶叫が響いた。
「新チャンピオン、三好喜美佳」-。
沸き上がる「三好コール」に、腫れ上がった顔からは笑みがこぼれた。「5年前から拳を交え、やっと勝てた。重たいベルト」。ガッツポーズで喜びを爆発させた。
粘り強さが信条の三好選手に対し、強烈なパンチ力が武器の東郷選手。対戦成績は2敗1分け(2KO)だったが、自信はあった。前回の対戦は2年前の4月。「自分は進歩している。相手の得意な距離に立たず、しっかり前に出よう」と臨んだ。
作戦は功を奏した。右へ左へと絶えず動きながら、愚直にパンチを打ち続けると、後半、東郷選手に疲れの色が見え始めた。「いける、と思った」。試合中も舞い上がることなく、冷静に考えられる。これも三好選手の持ち味の一つだ。
地元・川崎の大声援も背中を押してくれた。「応援に支えられた。これは絶対倒れられないぞって」
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山口県下関市出身。中学からバレーボールに打ち込み、高校卒業後に上京。「個人スポーツがしたくて」と都内のジムの門をたたいた。2007年、女子選手も多い今のジムに移った。
ボクシングの魅力にはまっていったが、当初結果は付いてこなかった。08年5月のデビュー戦は判定負け。その後も勝ちと負けを繰り返し、昨年6月、12戦目にしてようやく勝ち越した。「続けていればいいことがあると思って」。ここでも持ち前の粘り強さを発揮し、こつこつと努力を続けてきた。
自身の性格を「どちらかというとおっとり型」と分析する。現在は都内の厨房(ちゅうぼう)機器のメンテナンス会社で、事務の仕事をしながらボクシングを続ける。
「人間としても成長できる」とボクシングの魅力を語る三好選手。今後は世界を視野に、さらに厳しい練習が待ち受ける。「自分がどれだけレベルアップできるか、楽しみ。過程を楽しみながら、一日一日挑戦したい」
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