25日に行われたロンドン五輪のテスト大会を兼ねた射撃のワールドカップ(W杯)男子50メートルピストルで、今季初優勝した五輪日本代表の松田知幸(県警、横浜商大高出身)が27日、帰国した。W杯通算5勝目となった今大会。成田空港で本紙の取材に応じた松田は、五輪本番へ向け確かな手応えを語った。
松田は長旅にも疲れの色を見せずに帰国した。落ち着いた表情ににじみ出たのは風格。自らの結果と内容に弾みをつけ、決戦へ大事な感覚を手にした様子だった。
今大会は、あくまで「練習」の場に位置付けたという。五輪本番も同じ会場で行うため、気候や照明の当たり具合などを事前に確認する機会だった。周りに各国の五輪メダリストがそろう中、「自分は自分のベストを出せばいい」と他の選手を意識せず、「(会場は)撃ちやすかったし、フィーリングが合っていた」と、世界ランキング2位の実力を発揮した。
日本ライフル射撃協会の溝部政司ナショナルコーチは「50メートルピストルは、ライフル射撃の中で最も難しい」と言う。だが、松田は予選で自身初めての経験という10点満点を18発連続で命中させて「ゾーンに入った」と振り返った。本番も、決勝に進出すれば、まずメダルの獲得は堅いと太鼓判を押す溝部コーチは「射撃は『禅』の世界に近い。無我の境地というか、それに似た状態だったのかもしれない」と、驚異の18連発に舌を巻いた。
これで世界ランキング1位への返り咲きは間違いなく、五輪会場での優勝で金メダルへの期待が大きく膨らんだ。「私も期待している」と、うなずいたロンドン五輪の「日本代表第1号」の36歳は「意識をもっと高くして、妥協せず、安定感を持たせたい」と、さらなる進化を誓った。
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