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救世主さらなる高みへ バスケ・ファジーカス

川崎ブレイブサンダース | 神奈川新聞 | 2019年2月21日(木) 17:51

ファジーカス・ニック
ファジーカス・ニック

 米国生まれ、米国育ちのビッグマンが日本国籍を取得し、2020年東京五輪出場へ大きな一歩を踏み出している。Bリーグ1部の川崎ブレイブサンダースの点取り屋ファジーカス・ニック(33)。今夏のワールドカップ(W杯)出場、44年ぶりの五輪切符獲得の鍵を握る男が、決戦に挑もうとしている。

 日本バスケットボール界の「救世主」だ。

 昨年4月。一人の助っ人選手のニュースが、沈みがちだった日本のバスケファンを再び燃え上がらせた。「ニック・ファジーカス 日本国籍取得」。来日7年目。Bリーグ初代MVPに輝いた点取り屋の決断が持つ意味は、とてつもなく大きなものだった。

 「日本人の温かい心が好きになり、川崎でもっと長くプレーしたいという気持ちが強くなった。(国籍取得には)時間がかかったから達成感があったよ。それプラス、ボーナスもあるからね」

 ファジーカスが言う「ボーナス」とは、自ら日本代表として、ことしのW杯、そして1年後の東京五輪へ出場することだ。国籍を取得した時、日本代表はW杯アジア1次予選でまさかの4連敗中。五輪の開催国枠確定にはW杯での上位進出が求められており、既にW杯と五輪の双方で出場は崖っぷちだった。

 そんなジャパンの窮地を救ったのが、ファジーカスだった。昨年6月に強豪オーストラリアとの代表デビュー戦でいきなり両チームトップの25得点を量産し、歴史的勝利の立役者となった。以降、日本は破竹の6連勝。予選突破が絶望視された状況から一転、世界とも互角に戦える力を手にした。

残る負傷の影響 それでも

 米ネバダ大を経てNBAのマーベリックス、クリッパーズでプレーした実績を持つファジーカス。その210センチ、111キロの巨軀(きょく)がコートを駆ける姿を目にして気付くことがある。動きがスムーズではなく、やや足を引きずるように走っているのだ。NBA時代に膝を負傷した影響が、いまだに残っているという。

 それでもファジーカスを日本の大黒柱たらしめるのは、古傷で犠牲になった俊敏さを補ってあまりある多彩なシュートのバリエーションにある。ゴール下からの得点はもちろん、3点シュートの成功率は今季40・5%を誇る。後ろに下がりながら放つミドルシュートもあり、相手ディフェンスを翻弄(ほんろう)する。

 昨夏に左足首を手術した。今シーズンはスタートが遅れただけに、「全体的にシュート成功率が下がっていた。醜い数字だった。絶対もっと決められる自信があったので、懸命に取り組んだよ」。Bリーグでは、直近の2試合で計61得点。本領を取り戻したセンタープレーヤーを、誰も止めることはできない。

 来日してからブレイブサンダース一筋。最下位だったチームを入団1年目で準優勝に導き、旧日本リーグ、旧NBLでは3年連続で得点王に輝いた。「他のチームに行くなんて考えられない。自分がこのチームに来て、常勝チームとなる文化を築き上げてきたと思っている」。圧倒的な自負を抱き、Bリーグ3代目王者も見据える。

若者がバスケ始めるきっかけに

 W杯のアジア2次予選は大詰めだ。最終2試合はいずれも敵地で21日にイラン、24日にカタールと戦う。連勝すれば、自国開催(2006年)を除いて、21年ぶりとなるW杯出場が決まる。NBAのグリズリーズとツーウエー契約を結ぶ渡辺雄太と、米ゴンザガ大の八村塁が不在の中、ファジーカスに求められる役割は大きい。

 「若手に伝えたいことがたくさんある。長くバスケをやってきたし、今でも映像をいっぱい見て研究に時間を割いている。ただ、それを自分の中にとどめていては意味がない。教えることでも日本のバスケットボール界に貢献できれば」と決意を新たにしている。

 1976年のモントリオール大会以来となる五輪出場へ、その思いは膨らむばかりだ。「五輪に出場できれば、この国のバスケ界はもっともっと大きくなる。若者がバスケを見て『僕もやってみたい』という気持ちになる。自分のプレーでそのきっかけをつくりたい」

 日の丸を背負って戦うビッグマンには昨年3月、第1子の長男が誕生し、守るべきものが増えた。日本代表として、父として、かつてない使命感と責任感が、ファジーカス・ニックをさらなる高みへと導いていく。 =敬称略

ファジーカス・ニック センター。米ネバダ大卒業後、2007年にNBA・マーベリックスにドラフト2巡目で入団。クリッパーズでもプレーした。ベルギー、フランスリーグなどを経て12年に東芝(現・川崎)に加入すると、3季連続で得点王に輝いた。16年に開幕したBリーグでは初代MVPを受賞。昨年4月に日本国籍を取得。210センチ、111キロ。米コロラド州出身。33歳。


the eye


 気は優しくて力持ち-。取材中も笑顔を絶やさない「ニック」にはそんな表現がよく似合う。それでいて、イラン戦を前にした最後の試合では、会場のファンに「次に会うときはW杯出場を決めている」と強気に宣言。そのメンタリティーが日本代表にもたらしたものは計り知れない。記者自身も、大いに勇気付けられている。(倉)



 連載「THE REAL」では、東京五輪・パラリンピックを目指す神奈川ゆかりのアスリートに「リアル」に迫ります(随時掲載)。

 
 

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