
◇プロ見据え経験積む
日本代表候補に選ばれ、練習試合で力投する井口=18日、バッティングパレス相石スタジアムひらつか
遅咲きの右腕だ。中学3年で投手を始め、武相高では最後の夏にようやく開花して県8強入りに貢献。極北のキャンパスで全国レベルに成長し、日本代表候補にまで上り詰めた。今月17日、選考合宿で「JAPAN」のウエアに袖を通した井口和朋(21)は「帽子とかユニホームをもらい、多少は(代表としての)気持ちが出てきました」とはにかんだ。
その名を全国にとどろかせたのは、昨秋の明治神宮大会。上武大との2回戦に先発して6回2安打無失点に抑えると、駒大との準決勝にも先発して3回を封じた。全国大会には2年時も含めて3度出場し、計18回2/3を投げて21奪三振、無失点を継続している。
「何か一つ秀でているわけではない。気持ちで投げるタイプ」と自己分析する。持ち球は最速147キロの直球と、大小に変化するスライダー、そして昨秋から本格的に投げ始めたチェンジアップ。それらを四隅に投げ分け、窮地では闘争心を燃やして内角を突く。
巧みな投球術、力感あふれるフォーム。それらを下支えする技術と知識のすべては「高校時代に(武相高の)桑元監督から学んだ」と言い切る。
けががちで2年秋まで活躍できなかったが、3年春に急成長。神奈川大会準々決勝の桐蔭学園戦は九回1死まで投げて自責点1。延長の末に敗れたものの、井口は「高校時代のベストピッチができた」と飛躍の原点となった試合を振り返る。
大学は、全国大会への出場機会を求めて網走へ。初めて女満別空港に降り立った時は「景色がすべて真っ白」「どこにもビルがない」と驚いたが、3年たった今は「寮でみんなと過ごすのが楽しい」とすっかりなじんでいる。
昨秋以降、にわかに脚光を浴びても「まだ大事な場面を任されていないし、大学入学時に思い描いた理想にも全然届いていない」といたって冷静だ。ただ、投手としてのキャリアが浅い分「磨いていけるものばかり。伸びしろがある」と信じている。
卒業後は、かつて口にすることすらはばかられた「プロ入り」を見据える。周囲には社会人野球を勧める声もあるが「今がチャンス。行けるなら悔いを残したくない」と強く願う。代表入りを果たして貴重な経験を積み、夢をかなえるつもりだ。
▼いぐち・かずとも 東農大北海道オホーツク新4年。投手。小学1年から野球を始め、横浜都筑ボーイズを経て進んだ武相高では3年時に神奈川大会8強入り。177センチ、73キロ。右投げ右打ち。21歳。横浜市緑区出身。
【神奈川新聞】